第3話 澱み

 余りの事に呆然となった私の姿を目の当たりにし、心を痛めた父母は「とんだ不良物件だった!!」と口走る様になった。

 それでも彼のご両親が「せめてものお詫びに」と手を尽くして、良家のご子息とのお見合いの話を持って来ると「彼の墓前に報告して安心させてあげなさい」と現金な事を言って私を送り出した。


 こうして、彼の月命日の今日……私は雑司ヶ谷に居た。

 彼の墓前に敬虔な気持ちで手を合わせたのだが……

 吹きすさぶ秋風が身に滲み、私は堪らなく寂しくなって……指が覚えている電話番号をプッシュしていた。

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