第4話 ゴブミンさん機械仕掛けの馬に乗る

 ゴブミンさんをこの世界の良いに連れて行くことに相成ったのだが、僕自身何処に連れて行けばいいのか考え付かずに、夜も寝らずに熟考に熟考を重ねた結果、結局のところはベターな場所をチョイスした。


「ほぇーこれがユウエンチか。何だか騒がしいな」


 ウチ指定の赤いジャージを着たゴブミンさんが考え深げに遊園地の入り口をジーッと見ている。というわけで隣町にある遊園地にやって来た。名前はパクパクパークである。

 それにしてもゴブミンさんの私服姿が拝めると思ったのに、ジャージとは正直残念ではある。異世界物のゴブリンの様に露出の高い服でも困るが、ワンピースとかジーパン姿のゴブミンさんを見てみたかった。

 ゴブミンさんは顔を一切隠していないので、周囲の人たちは彼女のことをチラチラと見てくる。これでゴブミンさんが気分を害さないか少々気になった。


「あのゴブミンさん大丈夫ですか?」


「うん?何がだ?」


「いえ、周りの人たちがゴブミンさんのことを見てくるので、気分悪くしてないかな?と思って」


「あぁ、まぁだいぶ慣れてきたしな。大丈夫だ。向こうから喧嘩を売ってきたら買うだけだ」


 そう言いながら両手をボキボキと鳴らし始めるゴブミンさん。いつでも臨戦態勢はバッチリというわけである。これは逞しい。


「それよりも早く中に入ろう、早く早く♪」


 遊園地に来てテンションが上がっているのか、僕の右手を引っ張るゴブミンさん。彼女は力加減が分からないのか、僕は右手が引き千切れるかと思うぐらい痛かった。そんなことは一切顔に出さなかったことを誰か褒めてくれ。

 遊園地の中に入り、まず最初に行ったのはメリーゴーランドである。ここはベタな遊園地なので、メリーゴーランドとしては当り障りのない、定番の作り物の馬たちが人を乗せて上下しながらグルグルと回っていた。


「ここは何だ?乗馬をするのか?」


「え、えぇ……まぁ、そんなところです」


 僕自身メリーゴーランドの存在意義を考えたことが無かった。同じ所をグルグルと回るだけというのも、高校生の僕には物足りなさを感じざるを得ない。


「乗馬は得意だぞ。馬に乗りながら弓で獲物を仕留めたことも何度もある」


「す、凄いですね」


 不味いな。プロ中のプロじゃないか。こんな人がメリーゴーランドに乗って楽しめるのだろうか?否、断じて否だろう。ここはメリーゴーランドでは無く別の乗り物を……。


「早く乗ろう‼」


 再び僕の右手を引っ張るゴブミンさん。次こそ右手を持っていかれると思ったが、僕の右手の耐久率はまだあるらしく、ギリギリ大丈夫だった。

 メリーゴーランドの馬に颯爽と跨ると、ゴブミンさんはテンションがメチャクチャ高くなった。


「いやっほー‼何だか分からんがメチャクチャ楽しいぞ‼」


 よ、良かった。何だか分からんのに楽しんでもらえて。

 ゴブミンさんが楽しんでくれるのは良いのだが、隣の馬に乗っている僕は周りの人の視線に晒されて、顔を赤くして俯き気味になってしまった。

 そしてゴブミンさんが毎日こんな視線に晒されていると思うと、大変だろうなぁと同情の念を抱かずにはいられなかった。

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