第3話 ゴブミンさんはウンザリしてる

 二週間も経つとクラスメート達のゴブミンさんへの関心は薄れた様で、もはやゴブミンさんは空気と化している。それでも陰口を叩くような奴はいて、男子生徒などは卑猥なことの言い合いなどにゴブミンさんを出して、それを楽しんでいるのだから下品である。多種族の人が入ってきて、自分の種族の醜さに気付かされることになるとは何とも皮肉な話だ。

 ある日のこと、たまたまゴブミンさんと帰りが一緒になった。帰る方向も同じ様で、流れで一緒に帰ることになった。これを機に仲良くなりたいと思ったのだけど、元来の恥ずかしがり屋が発動し、自分からは何と話し掛けて良いのか分からない。一体どうしたら良いだろう?と色々考えていたのだけど、そう考えている内に彼女の方から声を掛けてきた。


「なぁ、一つ聞いて良いか?」


 喋りかけられたことは嬉しかったのだけど、一体これから何を聞かれるのだろう?僕はびくびくしながらも「ど、どうぞ」と返答した。

 そうしてゴブミンさんは溜まりに溜まった鬱憤を吐露した。


「お前たち人間は見た目が違うというだけで、どうしてそこまで妬み蔑むことが出来るんだ?私の居た世界では種族は違えど皆が多種族へのリスペクトを忘れなかった。お前たちの様に肌の色や外見の違いでイチイチ文句を言う奴なんて一人も居なかったぞ……我慢していたが、そろそろ限界だ。元の世界に、皆が居る里に帰りたい」


 ゴブミンさんは目に涙を貯めて、そう僕に訴えかけてきた。きっと話を聞いてくれるなら誰でも良かったのだろうけど、不謹慎ながら僕にそう打ち明けてくれたのが嬉しくて堪らなかった。だけどこのまま彼女を異世界に返すわけにはいかないと、僕はある種の使命感に燃えていた。


「ゴブミンさん、確かに僕ら人間は醜い部分を持っています。しかし同時に優しい部分も持ち合わせていると思うんです。このままこの世界の良いところを知らないまま、アナタを異世界に返すわけにはいきません。今度の休みに僕に付き合ってくれませんか?この世界の良い所にアナタを連れて行きたいんです」


 自分でもどうしてこんなに積極的な行動に出れたのか分からないが、多分そこにはこの世界にウンザリしている彼女を笑顔にしたいという要素も入っていると思う。


「この世界の良い所?こんなゴミ溜めみたいな世界に良い所なんてあるのか?」


 低評価過ぎて逆に笑えてくる。ゴブミンさんは余程この世界に絶望している様だ。まぁ、あれだけ好きなように陰口を叩かれて腹を立てない方が難しいだろう。


「はい、僕にドーンと任せて下さい♪あははははは♪」


 とは言ったものの、この世界の良い所とは何ぞや?自分でもパッと思いつかないのだから、もしかしたらこの世界の良い所なんて無いかもしれない。

 いやいやあるって、きっとあるから、検索すれば出て来るから、だから次の休みまでに良い所を決めておかないとな。


 


 

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