第29話

「……何かが起きてるのは確かだよな」


屋上で冷たい夜風を感じながら、オレはぼんやりと呟いた。

悪霊が増えてる。

それも、ただの増加じゃねぇ。

"普通じゃない悪霊"が現れてる。

未練が強すぎるのか、魂が異常に濁ってるのか――それとも、何か外部の影響を受けてんのか。

「もしこれが、自然に起きてることじゃないなら……誰かが意図的にやってるってことか?」

オレの言葉に、ヴェイルが腕を組んで考え込む。

「……可能性はあるな。でも、誰が? 何のために?」

「それがわかりゃ苦労しねぇんだけどな...ヴェイル怪我大丈夫か?」

「大丈夫」

ダルク先輩は、戦いの疲れが少し残ってるのか、動きがいつもより重い。

さっきの悪霊戦は、やっぱりただの"仕事"ってレベルじゃなかったんだろう。

「でもさ~」

ミラージュが、屋上の縁に腰を下ろしながら口を開いた。

「最近の悪霊って、ただ未練が強いだけじゃなくてさ、なんか違和感あるんだよね~」

「違和感?」

「うん、なんていうか……"誰かに悪霊にさせられた"みたいな感じ?」

オレたちは、その言葉にハッとして顔を見合わせる。

"誰かに悪霊にさせられた"――?

「……ミラージュ、お前、それどういう意味だ?」

「いや、ちゃんと説明しろって言われると難しいんだけどさ~。なんかこう、自然に悪霊になったっていうより……"仕組まれた"っていうか?」

「……マジかよ」

オレはミラージュの言葉を頭の中で反芻する。

さっきの悪霊も、未練が異様に強かった。

でも、それ以上に"異質"だった。

まるで、"本来そうなるはずじゃないもの"が、無理やり悪霊にされてしまったみてぇな……。

「……もしそれが本当なら、最悪な話だな」

「うんうん、最悪だねぇ~」

ミラージュは軽く笑ってるけど、目は少しだけ真剣だった。

「……でも、どうやってそんなことができんだ?」

「それがわかれば苦労しねぇな」

ダルク先輩が軽くため息をつく。

「まぁ……わからないまま放っとくわけにもいかねぇし、ちょっと調べるしかねぇな」

「ダルク先輩、それ誰がやるんすか?」

「お前らだろ?」

「「「えっ」」」

オレとミラージュ、ヴェイルが同時に声を上げる。

「いやいやいや、オレらだけでやんの?」

「他に暇そうな奴がいねぇからな」

「お前、"暇そう"で仕事振るのやめろ!!」

「じゃあお前、やらなくていいって言われたらやらねぇのか?」

「……やるけど!!」

「ほら、決まりだな」

ダルク先輩は軽く肩をすくめた。

オレはめちゃくちゃ納得いかねぇ顔をしながらも、仕方なくため息をつく。

「……まぁ、どうせこのまま放っといても仕事増えるだけだしな」

「そゆこと~」

ミラージュがヘラッと笑いながら立ち上がる。

「じゃあ、調査開始だね~! どこから探る?」

「……とりあえず、最近悪霊が異常発生してる場所を回ってみるか」

「そうだな」

オレたちは互いに頷き合い、夜の街へと飛び立った。

――この異変の正体、突き止めてやるよ。

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魂の回収人、今日も行く。 くらむ @1228_

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