第28話

戦いが終わり、オレたちは少し離れたビルの屋上で一息ついていた。

ヴェイルとダルク先輩のローブはところどころ傷んでて、特にダルク先輩の袖は結構派手に破けてる。怪我はヴェイルがいちばん酷い。

「……おい、ちゃんと手当しとけよヴェイル」

「わかってるって」

ヴェイルが軽く舌打ちしながら、傷口を確認している。

ミラージュが「はいはい~」と軽いノリで、ポケットから包帯を取り出して差し出した。

「ほい、応急処置セット! こういうのちゃんと持ってんのえらくね?」

「いや、なんで持ってんの?」

「なんとなく~?」

「適当かよ」

そんなやり取りを横目に、オレはぼんやりと考えていた。

さっきの悪霊――未練が強すぎて、異常なほど大きくなってた。

でも、ただそれだけじゃなかった気がする。

「……未練、か」

オレは低く呟いた。

あの悪霊は、生前"何かを奪われた"ことに囚われて、悪霊になった。

でも――。

「普通、あそこまでなんねぇよな」

オレの言葉に、ヴェイルがちらっとこっちを見る。

「……だな」

未練を残して死んだ魂は確かに悪霊化することがある。

でも、"周囲の魂を引き寄せてどんどん巨大化する"なんてのは、異常だ。

「やっぱり……最近の悪霊の異常発生と関係してんのか?」

オレの問いかけに、ダルク先輩が少し考え込む。

「……可能性はあるな」

「でも、何が原因なの?」

「わからん」

ダルク先輩はゆっくりと立ち上がり、夜空を見上げた。

「ただの偶然ってレベルじゃねぇ。誰かが仕組んでるのか、それとも別の要因があるのか……」

「……めんどくせぇ話になってきたな」

「だな」

オレとヴェイル、ダルク先輩、ミラージュは、同時にため息をついた。

悪霊はただの自然現象じゃねぇ。

何かが起きている。

それだけは、間違いなさそうだった。

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