第22話

「オレは餅が食いたい!!!」

夜空に響くオレの絶叫。

「五月蝿い」

そんなヴェイルの言葉は無視して…

いや、マジで納得いかねぇ。

忙しくて餅も食えねぇとか、そんな世界あるかよ!!

そんなわけで、オレはいつものごとくダルク先輩を探し出し、文句を言うことにした。

案の定、適当なビルの上で黄昏れていたので、すぐに突撃。

「先輩!!! 餅食いたい!!!」

「は?」

「オレ、正月も終わったのに餅食ってねぇんすよ!! これって人道的にどうなんすか!!」

「……いや、お前人じゃねぇじゃん」

「そこはスルーしろよ!!」

オレは勢いよく訴えるが、ダルク先輩は呆れたように腕を組む。

「餅ねぇ……お前、ほんっとどうでもいいことで騒ぐよな」

「どうでもよくねぇよ!! 正月といえば餅!! 餅は文化!! 餅は魂!!」

「はいはい。わかったわかった」

ダルク先輩はめんどくさそうにローブの中をゴソゴソと探る。

――ん?

「ほら、大福ならあるぞ。」

「は???」

オレはポカンとしながら、ダルク先輩の手元を見た。

そこには、しっかりしたサイズ感の大福が二個。

パックに入ってる。

「え、なんで持ってんの?」

「いや、たまたまもらっただけだよ」

「誰に!?」

「……まぁ、いろいろあるんだよ」

あるんだよ、じゃねぇよ。

つーか、死神もらいもんとかすんの!? どこで!? 誰から!?

――とツッコミたいことは山ほどあったが、目の前の大福の存在感がすべてを吹っ飛ばした。

「……餅じゃねぇけど、まぁ……」

指でちょっとつまんでみる。

もちもちしてる。

「よかったなこれあんこ入った餅だろ。」

「そうだな。だから食って黙ってろ。」

オレは黙って大福を口に放り込む。

もちもちした皮の中から、甘いあんこが広がる。

うまい。

なんか、めちゃくちゃ久しぶりに"食った"気がする。

「……これで満足しとけよ?」

「しゃーねぇ、許すわ」

オレは渋々頷いた。


……雑煮も食べたい( *`ω´)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る