第21話

「なぁ……クリスマス、終わったよな?」

「ん?終わったけど」

「……正月も終わったよな?」

「うん、終わったね」

空を漂いながら、オレは放心したように呟く。

ついこの間まで「クリスマス生き霊多すぎ問題」でバタバタしてたのに、気づけばもう年が明けてた。

そして――今になって、ふと気づく。

そして隣を飛んでたヴェイルの肩を掴んだ。

「オレ、餅食ってない!!!!」

ヴェイルが「は?」って顔をする。

「いや、知らん」

「いやいやいや、正月終わったのに一度も餅食ってねぇ!!」

「……そりゃそうでしょ。私ら仕事休みないし」

「納得いかねぇ!!」

オレは夜空に向かって叫ぶ。

いや、今まで気にしてなかったけど…餅どころか雑煮すら食ってない!? ふざけんな!!!

「ヴェイル、オレたちってさ……何食って生きてんの?」

「うーん……別に食わなくても平気だしねぇ」

「いや、そうじゃなくて!! 食えねぇの!?」

「食べようと思えば食べられるけど……そんな必要なくない?」

「いや、餅は別だろ!! 正月といえば餅!! 餅は文化!! 餅は魂だろ!!!」

オレの熱弁に、ヴェイルはめんどくさそうにため息をついた。

「じゃあ、食べれば?」

「いや、どうやって!?」

「人間に化けて買いに行けばいい」

「天才?…いや、前にコート買おうとした時にバレて怒られたな」

「何やってんだ知るか」

オレは悔しさに歯を食いしばった。

まさか……仕事のせいで餅を食う権利すら奪われるとは……!!

「……クソッ、死神の待遇改善を訴えるべきだな」

「いや、そこまでするか?」

「オレは本気だ」

正月は終わったかもしれねぇ。

でも、オレの餅を求める戦いはまだ終わってねぇ……!!

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