第20話


「……なんか、最近生き霊多くね?」

夜の街を飛びながら、オレはボヤく。

魂回収の仕事してると、いつもより妙に"生き霊"が増えてる気がする。

この間からの悪霊と同じようになんかに影響受けてんのか?

普通、生き霊ってのは無意識だったり逃げたいとか思った時に出すもんだ。

でも、ここんとこは妙に"妬み"とか"孤独"みてぇな感情に引っ張られてる生き霊が多い。

「なんか理由あんの?」

「……ヴェスペル、お前もしかしてクリスマス知らねぇの?」

「は?」

隣を飛んでたヴェイルが、呆れたようにこっちを見た。

「クリスマスだよ、クリスマス。人間たちのイベント」

「……ああ、なんか光ってるアレか?」

「そう、それ」

「で、それと生き霊が増えてるのに何の関係があんの?」

「妬みと孤独だよ。」

「……は?」

「ほら、人間ってさ、クリスマスになると『恋人がいない』『家族と過ごせない』『周りは幸せそうなのに自分はひとり』とか、そういう感情を抱えやすいんだよ」

「……え、めんどくさ」

「うん、めんどくさいね。でも、そういう負の感情が強くなると、生き霊になりやすいんだよ」

「妬ましい……とか思うと、魂が抜けるわけ?」

「そうそう。で、そのまま放置すると、どんどん黒く濁って悪霊になっちゃう」

……マジかよ。

「つーかさ、"クリスマス"ってそんなに重要なイベントなの?」

「人によるけど、気にする人はめっちゃ気にするよ」

「くだらねぇ……」

オレはため息をついた。

恋人がいねぇからどうとか、周りが楽しそうだからどうとか――知らねぇよ!!

「なんでオレたち死神が、人間の恋愛事情とかに巻き込まれなきゃなんねぇんだよ……」

「ほんとそれ。でも、こればっかりはどうしようもないんだよねぇ」

「クソッ……めんどくせぇ……」

今年のクリスマス、オレたち死神は"妬みで生き霊化した魂の回収"というクソめんどくせぇ仕事をさせられるらしい。



……マジで知らねぇよ、そんなの。

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