第17話
「まぁ、悪霊多いけどなんとかなってるし、まだいいけどさ」
「そうだねぇ。これで対処できないレベルだったら、さすがにヤバかったけど」
オレとヴェイルは、夜の街をふよふよと飛びながら、そんな会話をしていた。
悪霊が増えてるのは確かだけど、今のところオレたちがどうにかできる範囲ではある。
ただ、これ以上増えたらマジでキツいなー……とか考えながら、ふと空を見上げた。
月がやけに冴えてる。
……ん? ってことは……。
「……先輩、なんか最近、夜寒くね?」
「ん? そりゃ寒いよ、もう冬だし」
「冬」
「「…………」」
オレはローブの裾を掴んで、じーっと見つめる。
……この布、ペラくね?
いや、今更なんだけどさ。
オレたちが着てる死神のローブって、見た目こそダークでカッコいいけど、防寒性ゼロなんじゃね?
「……ていうか、このローブで寒さ防げるわけなくね?」
そう言った瞬間、ヴェイルが吹き出した。
「ははっ! 何今更言ってんの!?」
「いやいやいや、マジでおかしくね? オレら夜メインで仕事してんのに、なんでこんなペラッペラのローブ一枚しか支給されてねぇんだよ!?」
「まぁ、死神だし……」
「死神だからなんだ!!」
「だよね。寒いもん」
「マジでこの衣装設計したやつ出てこいってレベルだろ……」
オレは腕を組んで考え込む。
たしかに、オレたち死神は人間とは違うし、寒さとか暑さにはある程度耐えられる。
でも、耐えられる=寒くないじゃねぇんだよ!!
「寒いけど耐えられる」と「そもそも寒くない」は別だろ!!
「……これ、なんとかならねぇかな?」
「んー、ダルク先輩に文句言ってみる?」
「いや、アイツ絶対『気合でどうにかしろ』とか言うだろ」
「言うね」
「クソッ、死神の仕事環境、ブラックすぎんだろ……」
オレは夜空に向かって嘆いた。
――"死後の案内人"に労働環境改善って概念はねぇのかよ……。
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