第10話
……どうする?
オレは眉間を押さえながら、考え込む。
こういうイレギュラーな案件は、経験豊富な先輩に相談するのが一番なんだけど。
ダルク先輩は遠すぎる。
あの人、今どこにいるんだっけ?
確か、何百キロも離れた街で仕事してるはず。
仮に今呼んでも、すぐに来れる距離じゃねぇ。
ヴェイルとミラージュは?
……いや、ダメだ。
さっき「悪霊化したやつの処理に行く」って言ってたし、そっちも大変そうだった。
こっちに回せる余裕はねぇだろう。
……詰んだ?
オレひとりで対処するしかねぇってことか?
……クソッ。
こうなったら、本当は使いたくねぇけど――。
「……お前の記憶、ちょっと読ませてもらうわ」
女の魂はオレの言葉に反応せず、ただぼんやりと佇んでいる。
もしかすると、もう何も考えられない状態になってるのかもしれねぇ。
だったら、こっちで無理やり探るしかねぇよな。
オレはゆっくりと手を伸ばし、女の額に指を当てる。
"記憶視"――本当はあまり使いたくねぇ能力だ。
死神の中でも、限られたヤツしか持ってねぇ力。
生前の記憶に直接触れることで、魂の未練や死因を探ることができる。
ただこれは、使う側にも負担がデカい。
相手の記憶に引っ張られることがあるし、場合によっては"視たくねぇもの"まで視えちまう。
……まぁ、グダグダ言ってる場合じゃねぇな。
「――視せてもらうぜ」
そう呟いた瞬間、オレの意識が一気に引きずり込まれた。
景色が、変わる。
次の瞬間、女の記憶の中にいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます