第6話
ヴェイルとミラージュにやたらと褒められたのが、なんかモヤモヤする。
オレってそんなに能力の使い方上手いのか?
確かに回収ミスったことはほぼないけど、別に意識してやってるわけじゃねぇし……。
……まぁ、こういう時に話を聞いてもらう相手といえば、あの人しかいねぇよな。
ってことで、ダルク先輩を探してみたら、案の定、のんびり空を漂ってやがった。
「よっす、先輩」
「おお、ヴェスペルか。どうした?」
「いやー、今日ヴェイルとミラージュと一緒にいたんですけど」
「ほーん」
「なんかオレ、能力の使い方が上手いらしくて」
「ほう?」
「自覚ねぇんすけど、普通に魂の動き止めたり、悪霊化する前にスッと回収したりできるのがスゴいとか言われたんすよ」
「……あー……」
話を聞いていたダルク先輩が、なぜかふっと遠い目をした。
「…うん、オレもそれ欲しかったよ。あの時に」
「……ん?」
なんか今、めっちゃ意味深なこと言わなかった?
「先輩、『あの時』って?」
「……まぁ、昔の話だよ」
「いや、めっちゃ気になるんですけど」
「気にしなくていい」
「いやいやいや! 気になるから! てか何があったんすか!?」
思わず食い下がるオレを見て、ダルク先輩は苦笑いしながら
「しょーがねぇなぁ」
って呟いた。
「……昔な、オレはまだお前くらいの頃...死神になってそんな経ってない時、ある村に回収に行ったんだよ」
「うん」
「そん時、病気が流行っててな。一日で何十人も死ぬような地獄みたいな状況だった」
「……」
「オレは必死で魂を回収した。けど、間に合わなかったヤツもいた」
「間に合わなかった……?」
「未練が強すぎて、悪霊化するのを止められなかったんだ」
ダルク先輩の表情が、一瞬だけ陰る。
「親を失った子ども、子どもを失った親、愛する人を看取った恋人……みんな、絶望のまま死んでいって、魂が真っ黒に濁っていった」
「……」
「オレは必死に止めようとした。けど、まだ力の使い方が下手でな……止めきれなかったんだよ」
「……先輩」
「そん時に、お前みたいにスッと魂の動きを止められる能力があったら、もっと多くを救えたのにな、って思うんだよな」
……そっか。
ダルク先輩は、オレよりずっと長くこの仕事をしてる。
その分、オレなんかが想像もつかねぇような修羅場をくぐってきたんだろう。
「……オレは、お前みたいに器用じゃなかったけど、なんとかここまでやってきた。でもな、ヴェスペル」
「はい」
「お前は、お前にできることをやれ」
「……」
「その能力を持ってるなら、それをちゃんと使え。自分にしかできないやり方で、ちゃんと仕事しろよ」
ダルク先輩は、オレの肩をポンと叩いた。
……なんか、いつもの軽いノリじゃなくて、妙に真剣な感じだった。
オレ、ちゃんとやれてるのかな。
いや――やるしかねぇよな。
死神って仕事を続ける以上、オレはオレにできることをやるしかねぇ。
「……わかりました」
そう言うと、ダルク先輩は満足そうに笑った。
「よし、それでこそオレの後輩だ」
そう言ってワシワシと撫でた。
……なんか、ちょっとだけ誇らしい気持ちになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます