綺麗なアイドルは好きですか?

片山大雅byまちゃかり

綺麗なアイドルは好きですか?

 久しぶりにアイドル時代のアルバムを開いた。自画自賛にはなるが、あの頃の私は、綺麗で、煌びやかで、輝いていた。


 そんな私も恋をして、アイドルを引退した。今は現役時代とは対照的に静かに暮らしている。


 ふと、私を虜にした相手との馴れ初めをアルバムを見ながら振り返ってみることにした。


         ◇


 その頃の私はテレビからライブまで引っ張りだこの売れっ子だった。あの日もテレビに出演するため出演者にあいさつをしていた。


 つつがなく出演者にあいさつし終え、今度は裏方あいさつ。そこで、ディレクターと目が合った。


「奥川凛さん、今日はよろしくね」


「宮崎颯太さんですよね? 久しぶりです!」


 あっ、この人と思った。宮崎さんとは新人時代に少しだけ会っただけで、無論知り合いではない。それでも、あっ、この人と思い、声をかけていた。


 一目惚れだった。最初に出会った時、声をかけようと思っていたけど、勇気を出せずに関わりを持てなくて、そのまま疎遠になっていた。


 またとないチャンス。この機会を逃したら次いつ会えるか分からない。だから猛アピールした。


 連絡先を交換して、時間の隙間を見つけては会いに行った。着実に親睦を深めていった。


 そして……


「綺麗なアイドルは好きですか?」


「好きだね。美しい子は好きだよ」


「私はどうですか? 貴方の好きな綺麗なアイドルですよ?」


「綺麗なアイドルとしてじゃなく、一人の女性として、凛さんが好きだ」


「颯太さん……!」


 私たちは結ばれたのだった。


         ◇


 その後、電撃引退を発表して今に至る。引退を発表した瞬間は賛否両論だったけれど、私は後悔していない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

綺麗なアイドルは好きですか? 片山大雅byまちゃかり @macyakari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ