第14話

くっと、無意識に眉根を寄せる。


そうすればすかさず、「先に休憩にしますか?」と仙太郎が私に声をかけた。




「あら、どうして?」



「お疲れでしょう」




…駄目ね、気を緩めたのは失敗だったわ。


仙太郎に気遣われるほど、あからさまに表情を変えるなんて。




「疲れてなんてないわ。このまま行きましょう」




休憩なんてしてる時間が勿体無いじゃない。


何か…、なんでもいいから、少しでも前に進んでる実感が欲しいのよ。


それに多少の疲れなんて、小さい頃から慣れてるわ。




「お嬢様、何かあればすぐ仰ってくださいね」



「わかってるわよ。それより、この通路の先がクラゲよね?」



「…、はい。暗くなるので、足元にお気をつけください」




通路を進めば、仙太郎が言ったように周囲が暗くなる。


真っ暗な室内で、水槽だけが中から光を発していて。


その中をふわふわと揺蕩うクラゲは、まるで絵本の中の世界みたいに幻想的で美しかった。




「…凄い。綺麗ね」




笑みを浮かべて、反射的に仙太郎を見る。


光が眩しいのか目を細めた仙太郎は、「それはよろしゅうございました」とラッコの時と同じ言葉を口にした。

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