『さよなら妖精』、好きな作家の作品の紹介と感想
るかじま・いらみ
『さよなら妖精』 好きな作家の作品の紹介と感想。
⭐️多少のネタバレありです!
突然ですが私の好きな作家、米澤穂信先生の作品の一つ、『さよなら妖精』をご紹介したいと思います。
米澤穂信先生は推理物を中心に作品を出している方で、2022年に直木賞を受賞、アニメにもなった『氷菓』や『小市民シリーズ』の作者としても知られています。
舞台は90年代の日本のとある町。
ある雨の日、二人の高校生、守屋とセンドーは外国人の女性、マーヤに出会います。
当時のユーゴスラビアから文化を学びに来た彼女に宿泊先を探してあげたことから交流が始まります。
わずかな期間ですが、守屋は彼女と幾度となく対話を重ねて、様々な意味で彼女は自分と生きる世界が違うことを知ります。
滞在期間中、ユーゴスラビアを構成する国の一部が独立を宣言、これをきっかけに一気に戦争状態に陥っていきます。
そんな最中、マーヤは予定通り帰国していくのでした。
この作品はミステリ要素を含む青春小説です。
マーヤはユーゴスラビアを構成する六つの国のうち、どこの出身なのかあえて言わずに帰国しました。
作中最大の謎はここです。
彼女の安否が気になる守屋は、思い出からヒントを拾って彼女の故郷を探るのです。
それがわかったあと、センドーが止めるのも聞かず、守屋はマーヤの故郷に渡航しようとします。
彼のことを、若い、痛いと評する方もいらっしゃるかもしれません。
彼女は遠い世界からやってきて、狭い円の中で過ごす守屋の気持ちを強く揺さぶったのです。
守屋にとってマーヤは単なる異邦人ではなく、違う世界、違う生き方への衝動を生じさせる、強い魅力を持つ存在だったと思われます。
さよなら妖精という表題は、マーヤとの別れだけでなく、その思いが無に帰すること、諦めることも籠められているように思いました。
ちなみにこの作品、嘘かホントか、はじめは前述の『氷菓』の続編として作られたという話があります。
たしかに言われてみると、登場人物やその配役に共通点があるように見えます。
また同時に『フリージャーナリスト、太刀洗万智』シリーズの第0作ともされています。
この出来事が、センドーこと太刀洗が自分の将来を決める上で重要な位置を占めていたのは間違いないでしょう。
『さよなら妖精』、好きな作家の作品の紹介と感想 るかじま・いらみ @LUKAZIMAIRAMI
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