リアム

パスタ

「これからどこに行こっか。」


「ポーン…」


恋を打ち明けた後のアクミみつきと東急電鉄8500系8606Fはすっかり長いトンネルに慣れつつあったが、そろそろ暗闇の為の行動を起こさなければならなかった。

 それが意味したのは、リアム間の旅と模索。


まず、ハチゴーはスピードを少し落として、アクミに考える余裕を持たせた。

 

まず、ハチゴーの能力を説明する。


「ポーン、ポーン… ポーン...」


「そうなんだ。 へえ。 線路の切り替えに、空間の移動、ね...!」


「それって、駅の間? それとも空間の間?」


「ポーン、 ポーン…」


「そっか。 大丈夫。 大体分かる、と思う。」


「じゃあ、この空間を抜け出すには、このトンネルに十分な距離があるって事?」


「ポーン…」


「うんうん。 じゃあ、やってみて? 私をどこにへでも連れて行って!」


その後、ハチゴーがスピードを少しずつ、確実に上げていくと、限度まで走り先を急ぐ。


アクミはいつもと違うスピード感に慣れなくて体を包む様に縮ませた。


****


瞬間に眩い光が差した後、ハチゴーが力いっぱい非常ブレーキを掛けると、トンネルの様子が変わる。


トンネルの壁壁には、トイレのドアがいくつも並ぶ。

 それぞれ、女子用、男子用と交互に続いている。


そこを出入りしつつ、占領する様に人混みを作るのは、猫のような、狐のような、二足歩行の生物。


「電車、トマッテル。 電車、ジャマ。」

 

警笛。


アクミは体勢を落ち着かせて、窓の方を向きながらポツンと座る。


「ハチゴー、私達どこに着いたのかな...? 気になるな。」


警笛を立てつつ、ドアを開けるとドキドキするばかりにアクミが降りた。


「電車、人間。 人間、ノッテル。」


アクミはハチゴーの表の近くにいたその生物に近寄り、まず興味を示す。


「こんにちは。 私はみつきって言うの。 あなた達は誰?」


そうすると、

 「オレ、プキャト。 お前、人間。 お前はオレにパスタを作る。」


「ええ…?」


プキャトはどうも傲慢にこちらを見ている。

 とにかくパスタが食べたいようだ。


「じゃあ、ここはどこ...?」


「ココはプキャトパブリックトンネルトイレ場。 お前はオレにパスタを作る。 もう用は足した。」


****


「うーん... パスタを作る材料はここにないの、ごめんね。 ねえハチゴー?」


遠い「ポーン…」

 ハチゴーも困惑しているようだ。


「役立たずのフタリ。 パスタは必ず提供サレル。」


「今すぐパスタを作れ!」


プキャトは目を赤くして歯の牙を立てると、アクミをぐっと肩に掴み揺さぶる。


「うわうわ、困ったなあ。 作れないよお。」


それを見た他のプキャト達も揃ってデモを起こし始めた。


「パスタ! 人間はパスタを作る!」


「プキャトは用を足してパスタを食べる!」


「今すぐパスタ! パスタ!」


****


トンネル内が大合唱になる中、アクミはハチゴーを瞳で訴えた。


「ハチゴー、ここから逃げよう...?」


合図の警笛を立てると、ハチゴーはドアを開ける。


アクミは掴まれているプキャトを強引に離すと、騒ぐプキャトを避けて、来そうなプキャトを押し除けて、やっと電車の中へと戻る。

 その瞬間にドアを閉めるハチゴー。


プキャトは中に入らずとも車体へよじ登ろうとしたが、それでもハチゴーは遠慮なく走り出した。


プキャトがわさわさ退き回ると、ハチゴーはスピードを出して先を急ぐ。


その様にして、最初のリアムは攻略した。

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