第9話 真夜中のグミ

 その夜、私は午前1時に目が覚めた。

 やはり中途覚醒に苛まれていた。いくら事前に幸福を味わえど、次に待っているのは暗がりの夜だった。


 私はほんやりとした意識で、窓を眺めていた。

 悲しむべきなのだろうか。中途覚醒については毎日経験していたせいか、もはや悲しむことさえなかった。



 退屈な夜なので、何か口に含むものが欲しかった。私は棚からグミを取り出し、一粒口の中に放り込んだ。

 グミは甘ったるかった。私はそれを時々噛みながら、飴玉のように転がしていた。


 私には煙草の習慣がなかった。その代わり、グミや飴玉をよく口にした。


 特に、夜中に食べるそれらは美味かった。私はベッドに仰向けになりながら、その甘味に満足していた。



 ぼんやりと窓を眺めている間、私は先ほど見た夢について思い出していた。

 詳しくは思い出せないが、とにかく懸命に呼吸をしている夢だった。


 息を一度に大量に吸い、一気に吐くという動作を、何度も繰り返していた。

 私は夢の中で、かなり必死になっていた。肺は妙に苦しく、まるで喘息患者のような有り様だった。


 私は何故あのような夢を見たのだろうかと、首を傾げた。

 だが、夢分析というものには興味がなかった。私はただ夢を過去のものとして捉え、その晩限りの記憶に過ぎないと思っていた。


 夢はしばらく時間が経てば、忘れ去ってしまうものだ。そう思うと、夢について考えているのは何とも無意味なように思われた。



 私は倦怠感を覚え、大きくため息をついた。何だかグミを口の中に含んでいるのも面倒になった。


 私はそれを噛み、小粒にして飲み込んだ。口の中には甘ったるい余韻があり、頭がくらくらした。


 「何と無意味な時間なのだろう」


 私は暗がりの部屋で、一人ぽつりと呟いた。

 グミは虚しく喉を通り、胃へと落ちた。私はペットボトルの残った水を飲んだが、それも瞬く間に空になってしまった。


 意識するまでもない時間だった。私は目をつむり、早く朝が来ないものかと、ほんの僅かに神経を尖らせていた。

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