第2話 メニューと葛藤

 私は地下街を黙々と歩いていた。

 昼の時間だったので、食べ物が欲しかった。


 地下街には、定食や丼物の店がずらりと並んでいた。

 私は看板を眺めては辺りをうろつき、どれにしようかと一人悩んでいた。



 なかなか入る店が決まらなかった。昼の時間帯のせいか、どこも行列ができていた。


 並ぶことを考えただけで、気が滅入った。

 辛うじて店を選ぶことはできたが、立っている間は何もすることがないので、何とも無駄な時間を過ごしているように思えた。


 ずらりと並んでいる間、前の客は賑やかな声で会話をしていた。老人たちは運転免許や政治の話をしており、私はそれをぼんやりと耳に入れていた。



 30分ほど待ってようやく席についたものの、メニューがなかなか決まらなかった。

 2つの写真を並べてみたが、具材に多少の違いがあるだけで、どちらも同じように見えた。


 間違い探しのようにメニュー表を睨んでいたが、結局、私は最初に良いと思った方に決めた。

 しばらく考えていたあの時間は何だったのだろうと思うほどには、無意味な時間を過ごした。



 昼食は量が多く、私は腹いっぱいに料理を詰め込んだ。

 私は胃もたれを起こし、それだけで憂鬱な気分になった。


 別の店にした方が良かったかもしれないと、そんな後悔が長引いた。


 私は胃もたれを和らげるために、体を引きずるようにして地下街を歩き回った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る