なんか俺ん家に妖精が来たんだが?

136君

なんか俺ん家に妖精が来たんだが?

 いつも通り大学の授業が終わって家に帰る。


 今日も散々だった。変人教師には捕まるし、軽く手伝いさせられるし、学食で昼飯食べてたら周りに陽キャ共が集まってくるし。


「はぁ…」


つくづく陰キャの俺にはしんどい空間だ。


 そんな俺には、この家の中という環境が唯一無二の癒しの空間となっている。ガチャっとドアを開けると、俺用に作り替えた空間が現れた。


 後ろ手でドアを閉めて、部屋の明かりをつける。広さは1K。大学生としては一般的な広さなんだろう。


「ふぅ、極楽極楽。」

「そうですか。勝手に掃除させて貰った甲斐がありますね。」

「そうだな…って、誰だお前?」


荷物をそこら辺に投げ捨てて、いつも座っているゲーミングチェアに座ると、突然誰かに話しかけられた。その方向を見ると、ふわふわと浮いている1人の少女が。大きさは掌ほどで、背中からは羽が生えている。


「ふふっ、その顔最高!私の名前はエレモア。人間のお手伝いをする妖精って思ってくれるといいわ。」


エレモアは俺の周りを飛び回りながら「驚いた?驚いたでしょ?」って囁いてくる。うるせぇ。


「んで、何しに来た?」

「まぁね、私ずっとここら辺に棲みついていたんやけど、さすがにこの家がアホなことしかしてない思ってさ。ちょーーーっと手助けしようって思ってん。」


いきなり関西弁になったエレモアは、キーボードの上に座る。そして足を組んで頬杖をついた。


「この家のどこが不満なんだ?」

「ん?聞きたい?例えば缶ゴミのところにエナドリの缶しか入ってないとか、せっかくキッチンあんのにコンビニ弁当しか食べてないとか。漫画の順番がぐちゃぐちゃとか。」


聞けばまだ出てきそうだったので、俺はそれを制して話し始める。


「はいはい。直すから出てけ。男の花園に入ってくるな。」

「え〜、せっかく1回きりの権利使ったのにそんなこと言うんや。私かわいそう…しくしく…」

「1回きりの権利って?」


分かりやすく嘘泣きを始めるエレモアにそう聞いてみる。


「1回だけ姿を見せる権利。この権利を使ったら姿を消すことも出来ひんし見せることも出来ひんねん。」

「それはしょうがないな。とりあえず出ていこっか。」

「なんでそんな事言うねん!」


エレモアは俺に体当たりしてくる。割とマジで痛い。


「分かった分かった。家に置いてやるから、いちいち文句言うなよ。」

「はぁーい。」


うわぁ、めんどくせぇ生活が始まった…

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