第三章:揺れる波
「なにそれ?なんの冗談?」
「そんな顔すんなって」
「ほんと、面白いわー」
「なんだよー」
あー危ない。
冗談という事にしているが、ちょっと心が痛いな。
まだ、康介が笑ってくれてたのが不幸中の幸いだった。
もしこれでキレられてたら結構メンタル削られるなと思っていた。
「侑李、来週の日曜日空いてる?」
「空いてるけどなんで?」
「水族館デートしよ?」
「は?」
「いいじゃんダメなの?」
「別にいいけど」
「じゃあ決まりね」
ばいばーいと手を振る康介を眺めていた。
◆◆◆
今日は猛暑日らしく、エアコンをつけなければ熱中症になるくらいに暑い。
月日は流れあっという間に日曜日になった。
正直いって緊張する。
けど、それを悟られないようにするのが俺だ。
「あー服どうしよう」
一事言い終わった後に割と大きい声が出たと気づいた。
でも、今日は家に1人。
という訳で大きい声を出しても大丈夫という訳だ。
服を引っ張り出してはミニファッションショーをしながら服を見ていく。
本気で悩んでる時、スマホが鳴った。
「こんな時に誰だよ」
え、康介だ。出なきゃ。
「もしもし?」
「侑李。ごめ、」
「え?なに?」
「熱、出して。今日行けなくて、ほんとごめん」
「そうなのー?」
「ほんとごめん。」
「全然大丈夫だよ。今は自分の体調優先でしょ」
「ほんとありがとう。」
「じゃあ切るね」
「待って。」
「え、どしたの?」
「……侑李、会いたい」
「看病しに行くよ」
「ありがとう」
そう言った後にプツンと電話は切れた。
家にある熱さまシートと、レトルトのお粥、後は…コンビニで買えば良いか。
動揺を疲労で隠すかのように康介の家へと走った。
チャイムを鳴らすと、数秒して物音がした。
ゆっくりとこっちに向かってきている音がする。
鍵は掛かっていなかったらしく、康介の体重でドアが開いた。
俺を見た瞬間、康介は俺に体を預けていた。
「康介、大丈夫?」
「結構やばいかも」
「鍵空いてんなら言ってくれれば良かったのに」
「ごめ、忘れてて」
「そっか。とりあえず上がるよ?」
康介を抱き抱えながら家へとお邪魔した。
顔も赤く、汗もびっしょりかいていた。
俺が変わってあげられたらいいのにと今日で何回も思った。
「親は?」
「どっちも仕事で家帰らない」
「そっか。」
「お腹は?空いてる?」
「微妙かも」
「ゼリーだったら食べれる?買ってきたけど」
「ごめん、それ食べる」
「謝んな」
「ごめ…、ありがとう」
俺はコンビニの袋から出したゼリーの蓋を開けてあげ、康介に渡した。
「ありがとね」
「全然いいですよ、お姫様」
「なにそれ、辞めてよ」
「ごめんね?」
ん、と頷いた康介はいつにも増して可愛く見えた。
康介はゼリーを爆速で食べたのか、残りわずかとなっていた。
「もう食べ終わるの?もうちょっとゆっくり食べなよ」
「美味しかったから、つい」
「そ、なら良かった」
「それ食べたらもう寝な?」
「ちょっとまだ話していたい…ダメ?」
「別にいいけどー」
何を話すんだろう
特に何もなかったよなーと自問自答していた。
「ゆうくん、久しぶりだね」
「は?」
え、今俺の事ゆうくんって
もしかして康介は気づいていたのか?
だとしたらなんで転校してきた時に言わなかったんだ。
「俺ね、侑李の事好きだったんだよ。」
動揺した。
康介が俺の事を?そんなはずがない
「何言って…は?」
康介の方を見るとぐっすりと眠っていた。
コンビニで買ってきた果物を冷蔵庫へ入れると、眠気が襲ってきた。
少しだけ仮眠を取らせて貰うとする。
永遠の波に攫われた。 @Narumiya_Reina
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