樹海調査チーム

調査チーム

~教室~

ミスト「はい。今月きょうの授業はここまでです。お疲れ様でした」


《授業を終えたスピカは、荷物をまとめている》


ミスト「スピカさん、少しいいかしら」


スピカ「へ?はい!」


《慌てて荷物を持ち、ミストのもとへ》


スピカ「どうかしましたか?」


ミスト「伝言があるの。ヴァニラがあなたのことを呼んでいたから、用事がなければすぐにでも星霊殿に向かってあげてください」


スピカ「ヴァニラ先生が?わかりました」


ミスト「はい。それじゃ、よろしくお願いします」


~星霊殿~

《スピカは緊張しながら大広間の扉を開ける》


スピカ「お、お邪魔しまーす」


シャウラ「スピカ!」


スピカ「あれ、シャウラ」


《部屋の中にはヴァニラの他に、3人の人物がいた。そしてその全員に見覚えがある》


スピカ「えっと……ライラック、ローシェンナ?」


ライラック「ええ、そうよ」


ローシェンナ「覚えててくれたんだ!」


ヴァニラ「ようやく揃った。話を始めるから集まれ」


《4人は慌てて1列に並ぶ》


ヴァニラ「お前たちには樹海の調査を命じる」


ローシェンナ「じ、樹海!?」


シャウラ「調査……え、私たち4人で?」


「ちょっと急すぎるわね……」


ライラック「ど、どうして私たちに?王都は調査隊を派遣しているはずよ」


ヴァニラ「簡単なこと、魔法使いでないと対処できないからだ」


「王国から派遣された隊は入口付近で留まり続け、進展がない。魔物への対処で手一杯」


「だからお前たちは、1つのチームとして調査に加わる」


シャウラ「それならなおさら、どういう人選?学院には、魔物が出るような場所に派遣されるチームが既にあるでしょ?」

「彼らは便利屋というべきかもしれないけれど、魔物への対処は慣れているじゃない」


ヴァニラ「私に聞くな、他から数人選べと言われただけだ」


ローシェンナ「うう、でも魔物と戦ったことなんてないよ……」


ライラック「便利屋チームは人手が足りないのかしら。私たちを危険度調査に使うわけじゃないわよね」


ヴァニラ「馬鹿げた考えだ」


「私が、死んで逃げることを許すと思うのか?」


シャウラ「先生が生徒を使い捨てる人じゃないのは私がよくわかってるわ」


ライラック「そ、そういう意味じゃなくってね……学院にどんな考えがあるのか、さっぱりわからない」


ヴァニラ「私の知ったことではない。どうせ逃げられないんだ、私もお前たちも」


《ため息をついてヴァニラは立ち上がる》

《指で紋を描くと、4つの黒い小石が現れる。薄く、鱗のようにも見える》


ヴァニラ「気休めに持っておけ」


《ヴァニラの指の動きに従い、小石はそれぞれに与えられる》


《触れるとほのかに温かい》


ヴァニラ「スカーレットにも事情を話してある。必要なものがあれば都度頼め」

「それと報告は私にしろ。互いに面倒だろうがそういった規則になった」

「学院を出るときはいつもどおり門番に声をかけろ。騎士隊にも挨拶をしておけ、責任者のファニエは話の通じる奴だから」

「以上。質問は」

「……よろしい、解散」


《ヴァニラは部屋に戻る》


ライラック「えーと、どうする?今すぐ寮に行く?」


スピカ「そうだね。特に何もないし」


ライラック「……あ、そういえばちゃんと自己紹介した方がいいわよね」


「私はライラック。学院に来て5年になるわ」


ローシェンナ「私はローシェンナ。学院に来たのは2年くらい前かな……」


シャウラ「シャウラ。物心ついた時から学院にいたわ」


スピカ「私はスピカ!来たばっかりでこんな事を任されてびっくりだけど……これからよろしくね!」


《部屋を出るとそのまま寮へ》


~寮~

スカーレット「ああ、待ってたよ」

「お前たちも大役を任されたものだなあ」

「さて、探索に必要な物品はこちらで手配するよ。薬や装備、ちょっとした道具もね」

「と言っても、まだ急ごしらえのものしかないけど……」

「とりあえず、普通のものよりも頑丈な服を用意しておいた。まずはそれでしのいでくれ」

「あとは薬類も、渡しておくね」


《装備や道具を受け取る》


スカーレット「樹海には魔力が満ちていて、あたしたちもそれを吸収することが出来る」

「とはいえその速度なんてのろっちいから、いざと言う時はこの薬をゴクリとね。魔力がぎゅっと詰まってるからすぐに回復できるらしいよ」


ライラック「ありがとうございます、スカーレットさん」


スカーレット「いいんだよ、あたしの仕事だ。それじゃあ無理せず頑張るんだよ!」



スピカ「樹海に行く時って、やっぱり正門からだよね?」


シャウラ「そりゃそうでしょ」


ライラック「門を開けるから自然とヴァニラ先生にもわかるのね」


???「にゃーん」


《黒猫が寄ってくる》


ローシェンナ「あれ」


スピカ「クロネだ」


シャウラ「どうしたの、クロネ」


クロネ「面白そうな話を聞いたからね。少し様子を見てみようと思ったのさ」


「君たちは早速樹海へ行くのかい?」


ライラック「とりあえずどんな所なのか軽く調べたいっていうのはあるけれど」


ローシェンナ「そうですね、ちょびっとだけでも」


クロネ「それなら、多分戦闘があるだろう。入口は穏やかといえど魔物は生息している」


スピカ「魔物……」


クロネ「大したことは無いだろうけど。みんなの魔法を確認しておいた方がいいんじゃないかい?」


シャウラ「それもそうだわ」


ライラック「私は銃……魔銃を扱うわ。2つあるから手数に自信ありってところかしら。素早い動きも任せてちょうだい」


クロネ「魔銃。魔力を弾にすることもできる武器だね。2丁ということはひとつに力をまとめれば強烈な一撃も放てるわけだ」


ローシェンナ「わ、私は……回復魔法が得意です。攻撃できるような魔法は使えませんが……い、いつか覚えます!とりあえずは……その、杖で、こう!」


シャウラ「殴るのね」


クロネ「殴るんだね」

「君からは潤沢な魔力を感じるから、スタミナ切れをしにくいだろうね。才能溢れる子だ」


ローシェンナ「そ、そうなんですか……?」


シャウラ「私の武器は本。これを媒介に魔力を引き出すって言うのかしら……?」


クロネ「そうだね。シャウラにとっては魔法をそのままぶつける攻撃が一番いい。魔力量も多いし魔法を主体にするのが安全かな」

「万が一の時は」


シャウラ「本の角……」


クロネ「うん……君は特にスタミナに気をつけないとだね」


スピカ「私は……よくわかってないけど、白い光が扱えるの。私のことを助けてくれるんだ」

「まるでこの光が意志を持っているみたい」


クロネ「なるほど。じゃあ仮にその光のことを妖精とでも呼ぼうか。主を守るために危険を排除しようとするわけだ」

「汎用性に富んでいるね。様々な応用が利いて、攻撃も防御も、サポートもこなせるだろう」


スピカ「あ、あと……剣なら扱えるよ。村で習ってたんだ」


ライラック「へえ、頼もしいわね」


クロネ「よし。各々の特徴は掴めたかな」

「バッチリみたいだね。出発するときは私が門を開けよう」


スピカ「忘れ物はないか、確認しておこう」


ライラック「身支度もしっかりね」


《道具のチェック後、クロネに話しかける》


クロネ「くれぐれも無理はするんじゃないよ。特に、礼服の彼女なんかを見かけたらすぐに逃げるんだ」


《樹海へ》

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