妖精たちを誰と談義する
辺理可付加
『暑くて限界』
「あぁっつぅ〜!!」
真夏の放課後、
「今日も40度超えるんだってねぇ」
木陰で大汗かいているのは
彼女は日光で熱くなり触れなくなったギターをケースに置く。
「誰だよ、『たまには外で練習しよう! 風に私たちのメロディを載せるんだ!』とか言い出したヤツ!」
「天弓ちゃんだよ。一番屋外練習不可能なドラムの天弓ちゃんが言い出したんだよ」
一連の会話でお分かりと思うが。
二人はインディーズ女子高生音楽グループ
『月極バンド』
のメンバーなのである!
ちなみにバンド名の由来は全員が『
ちなみに残りのメンバー。
ベースの
『妖精に学生証を盗られて追い掛けた』
と
ボーカルの
この場には2人しかいない。
「妖精って、通用すると思ったのかなぁ」
常識ではあり得ない発言だが。
付き合いが長い天弓にインパクトはないらしい。
「はじめちゃんは『妖精』って言われたら何イメージする?」
「うーん、妖精」
「ゴブリン? ホブゴブリン? グリーンゴブリン?」
「何そのゴブリンへのこだわり。最後のは違うし」
「で、何ゴブリン?」
「ゴブリンじゃないよ! ティンカーベル?」
「ふーん」
「なんだそのリアクション」
ちょっとイラッとするが、あの執拗な前振り。
もしかしたら天弓はゴブリントークでゴブりたかったのかもしれない。
「天弓ちゃんはゴブリンなんだよね?」
「は? 人間だけど」
「そうじゃなくてイメージする妖精!」
「マーメイドかな」
「ゴブリンじゃないのかよ!」
「ナマ足魅惑って、何をもってマーメイドと判断したんだろうね?」
「『YO! SAY』じゃねぇか!」
と思ったらこの始末。
このバンド、ロクなヤツがいない。
「でも足だよ? 魚じゃないんだよ?」
「知らないよ!」
「何か!? 鱗で覆われとるんか!?」
「おいーす」
「あ、鈴ちゃん。助けて、また天弓ちゃんが」
「はぁ」
「それって魅力的な足かなぁ!? どうかなぁ!?」
「よう分からんが、
半魚人かリザードマンなんだろ」
T.◯.Revolution、半魚人だった。
妖精たちを誰と談義する 辺理可付加 @chitose1129
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