第8話 なんとかなれ!
まずは1人目の生徒が的当ての指定位置に立ち、魔法を構えている。
的へ向かってかざされた右手からは紫に光る魔力が漏れでている。
素人目ではなんとも幻想的で、発動者が卓越した魔法の使い手に思えてしまうかもしれない。
でもあれは魔法の発動や身体強化を行う際に発生する魔力の無駄が体外へ排出されたものだ。つまりあの光が多ければ多いほど、魔力操作が未熟だということになる。
俺は8年間ずっと魔力操作の修行をしてきたので、あの魔力の無駄を一切無くすことができる。
もちろんそんな離れ業をこの場で見せるわけにはいかないのでちょっと雑なくらいがちょうど良さそうかな。
「次、ラクス・ハーミット」
いよいよ俺の番が来た。
俺は右手に魔力を込め、魔法発動の構えをとる。
火属性魔法を使う割合が高めだけど、俺は一番使い慣れている風属性を選ぶ。
用意された3つの的へ圧縮した風を飛ばし、的確に中心へ命中させた。的の交換をする教師が大変そうだから威力は抑えめで。
それなりに魔法を発動させる時に魔力を漏らしたから向こうからの評価は10点中7点ってところかな。
ここの試験は何の問題も無く突破できた。
……問題は次だけど。
***
第二グラウンドの端で行われていた1つめの試験が終わり、グラウンドの中央で行われる次の試験へ俺たちは向かう。
「なあなあ」
「ん?」
移動中、俺の次に試験を受けていた男子生徒から話しかけられた。
「さっきの的当て、凄かったな」
「そうかな。まだまだ魔力の無駄も多いし、窓を壊すほどの威力も出せないんだよね」
「俺は2発外しちまったよ。一応全部ぶち壊せたけどな」
交換する教師が泣いてるよ。あそこで評価されるのは無駄になる魔力の量と狙いの精密さだというのに。
「あ、そうそう。俺はアラン・ジークフリート。良かったら仲良くしてくれよ」
「俺はラクス・ハーミット。こちらこそ、仲良くしてもらえると嬉しいよ」
凄い受動的だったけど俺は初の友人を手に入れた。気さくで明るくて、隣にいても居心地良さそうなタイプっぽいし大切にしないとね。
グラウンドの中央では腰に剣を差した貫禄のある男が立っていた。
「こんにちは。私はガラハッド・オルレアン。王国直属の魔導騎士団団長です。新入生の皆さん、まずは入学おめでとうございます」
「魔法教育の進化により、年々魔導士のレベルもそれに比例して上昇しています。それはこの学園に限った話ではなく、入学するまでに受ける機会があったであろう基礎教育も同様です」
「だから私は、その成果を実際にこの目で、この剣で見定めに来ました。だからぜひ、全力で挑んでください」
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