第二章

第7話 実技試験

 寮からの登校中、すれ違った男が持っている新聞をチラッと確認してみた。


 そこには『宝石泥棒3人組、正体不明のヒーローが成敗!』という見出しの記事が載っていた。


 そうそうこれこれ、俺はこういうのがやりたかったんだよ。


 ラクス・ハーミットとしての俺自身が誰かに感謝されることはない。それでも宝石店の店主は確かに正体不明のヒーローとしての俺に感謝していることだろう。


 それが俺にとっての至福だ。


「今日は入学後試験か。皆はどれくらい強いのかな~」


 俺は家に籠ってでほとんど独学で魔法や剣術を学んだから実は井の中の蛙状態。


 とはいえバハムートを1人で倒せる俺より強い生徒なんてそうそういないだろうし手加減の練習は十分にしてある。


「というか、結局剣持つことになっちゃったし……」


 俺は剣を使うには携帯しなければいけないことが嫌だったけど、魔力を固形化することができる人間など俺以外にはおそらく存在しない。


 だから剣術も学ぶためには普通の剣を持たざるを得ないというわけ。


***


 仮決定された教室の自席に荷物を置いて、昨日入学式を行った大講堂へと移動する。


 同じ方へ向かう他の生徒たちからは緊張が感じとれる。


「ああ、また会いましたね」


 昨日の朝と同じように後ろから話しかけられた。


 俺はその声とシチュエーションにデジャブを感じながら振り返る。


「昨日ぶりですね、おはようございます、シャーロットさん」


「おはようございます」


 そういえば正式にクラスが決まってからでも交友関係は築いておきたいな。


 悔いの無い青春を送る上で、友人選びは非常に大事になってくる。まあ、相手が俺を選ぶかは置いといて。


 この人はおそらく俺のことを好奇の目で見ている。才能が重視される魔法の世界において魔導士の家系でない俺のことが気になるのだろう。


 そこを利用すれば知り合い以上の関係にはなれるかもしれない。


***


 大講堂で説明や諸注意などを受け、次は実技試験の会場となる第二グラウンドへと移動してきた。


 今回の実技試験の内容は、1つ目に的当て、2つ目には特別ゲストである魔導騎士団団長との軽い実戦があるらしい。


 つまりシャーロットさんの父にあたる人との実戦になる。


 ……そこがちょっとまずいかもしれない。例年は剣術を教える教師が実戦の相手を担当していたからこれは想定外だった。


 当然向こうは相当の実力者だろうし、こちらが下手に手を抜いてしまうとそれに気づかれてしまう可能性が高い。


 もちろん手は抜く。それなりに良い、中の上くらいの評価をもらうためには絶対必要なことだ。


 順番では、俺より前に22人いる。22人分の的当ての精度や無駄な魔力の量を確認しながらその対策を考えるとしよう。

 

 

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