第13話
「ルナ、その決断は本気で言っているんだね?」
二人で話をした後、ルナとネリスは叔父と叔母へリスヴェルの村を出て旅に出たいと考えていることを伝えた。
「うん、叔父さん私は本気だよ。自分の力のことをちゃんと知っておきたいんだ。そのために星の紡ぎ手を育成してるって言われてる賢者の元を目指そうと思ってる」
「……」
ルナの叔父は彼女の話を聞いてしばらく黙って考え込んでいた。ルナも大きな話をしているのだから無理もないと思ってたため、ルナも黙って叔父の発言を待つ。
「あなた」
今まで黙っていた叔母が口を開く、叔父は彼女のほうを向いて発言に耳を傾けた。
「ルナを……行かせてあげましょう」
「しかし……」
「この子はこうやって決めたら昔から必ず自分の意見を通す子よ。私のことを考えてこっちが意見を言うことを待っているけれど決心はもうついているわ」
「……」
「それに……あんなことがあったあとじゃそのほうがいいと思うの。自分の持つ力のことが分からないというのはきっと恐ろしいことでしょうし。二人にはきっと自分の力について知ることが必要なのだと思うわ」
「……そうだね」
叔母の話を聞いて叔父もどうするかを決めたようだ。
「ルナ、君が旅に出ることは認める。ネリスのことはちゃんと面倒を見てあげなさい」
「ありがとう、叔父さん、叔母さん。私の勝手な話を聞いてくれて」
「……いや、ルナの性格ならいつかきっと同じようにここを出ていくことを言い出しただろう。費用や道具は出来るだけ用意するから数日間待ってくれ。ルナやネリスも準備があるだろうからその間にいろいろ整えておきなさい」
「うん、分かった」
こうしてルナとネリスの今後の行動が決まった。目指すは賢者の住む王都だ。
*
ルナとネリスが村を出ることを決めて数日経った。その間ルナ達は旅に出る準備で忙しく、休んでいる暇はなかった。慌ただしい時間を過ごしてルナ達が旅立つ当日となった。
「今日でこの部屋ともお別れか」
ルナは自分の過ごしてきた部屋を見ながら呟く。この部屋で長い時間を過ごしてきたルナにとってはここを離れるのは少し寂しいものがあった。
「あっ……」
ふと机に置いてあったあるものがルナの目に留まる。それはあの星の紡ぎ手の話をまとめた本だった。
「今あるものはなるべく持っていかないつもりだったけれど……これはやっぱり持っていこうか」
気持ちを切り替えるためにもなるべくここにあるものは持っていかないつもりだった。けれどこの本だけはどんな状況になっても自分からは切り離すことは出来ないらしい。
「お母さん、どうか私を見守っていてください」
ルナは祈るように呟くと机の上に置いている古びた本へと歩みより、手に取った。
「ルナ」
声をかけられたので部屋の入口のほうを見る。そこには旅に出る支度を済ませたネリスがいた。どうやらルナがやってくるのが襲いから様子を見に来たらしい。
「ごめん、ネリス。待たせちゃったみたいだね」
「いえ、いつまでもルナが部屋から出てこないのでなにをしているのか気になっただけですから。まだ気になることがありますか?」
「ううん、もう大丈夫。皆を待たせてるから早くいこう」
「はい」
ネリスとともに部屋を出ると叔父と叔母、それからリリアが二人を待っていた。三人とも緊張しているのか表情が硬い。
「ルナ」
叔父がルナの肩に優しく手を置く。温もりがその手を通して伝わってきた。
「お前は一度決めたら曲げない子だ。だから止めはしなかった、けれどもしお前が旅に疲れ果ててやめてしまいたくなったら……いつでもここに戻ってきなさい。私達はいつだってお前の見方だから」
「叔父さん……ありがとう」
叔父がルナを抱き寄せ、叔母もルナの頭を撫でる。
「ネリスさん」
「はい」
「旅の間、この子のことを頼む。きっと手がかかると思うがな」
「はい、任せてください。ルナのことは私が守ります」
「お姉ちゃん、ネリスさん」
「リリア?」
「絶対ちゃんと帰ってきてね。あの日に起きたことで二人が特別な人間なのは私も理解したよ。でも私にとっては二人は家族なんだ、また一緒に遊んだりしたいから無事に戻って来てね。それからネリスさん、他の人がなんて言おうと私はネリスさんのことを信じてるよ」
「ありがとう、リリア。必ずルナと一緒に戻ってきますから安心してください」
別れの挨拶を済ませたルナとネリスは賢者がいると言う王都へ向けて旅立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます