第4話
森の中で見つけた少女――ネリスを連れてルナは村へと戻った。
「よし、入って」
こっそり家から抜け出してきたため、見つからないようにルナはネリスを招き入れる。ネリスはルナの指示に従って家の中へと入った。
「え~と……そのネリスさん? あなたにはいろいろ聞きたいことがあるんだけど……」
ルナは担当直入に話を切り出す。あんな森の中で倒れていたんだ、本人は記憶がないと言っていたけれどもう少しいろいろと聞いて起きたいところだ。
「そのやっぱり思いだせるのは記憶だけ? あそこから戻ってくる間になにか思い出したりとかはない?」
ルナの質問にネリスはやはり首を振る。自分がどこから来たのかも分からないのはなかなかに厄介だ。
「そっか、思い出せないか」
「すいません、自分が誰か分かっていないなんて変ですよね。そんな人間を家に居させるのも……」
ネリスは罰が悪そうに答える。
「ご、ごめん、そんなつもりで言ったわけじゃないんだ。うーん、でも困ったな。これからどうしよう」
頭を悩ませるルナ。ネリスのことを放り出すわけにもいかないけれどいつまでも隠し通せるとは思えない。
「あの……」
悩んでいるルナを見てネリスが声をかけてきた。
「あ、ごめん。どうしたの?」
「その、もしよろしければですが……ここに居させてもらえないでしょうか? お手伝いでもなんでもしますから」
そういいながら頭を下げるネリス。
「えっと……そんなにかしこまらなくてもいいよ。家のことを手伝ってくれるっていうのはいいかも」
どこにも彼女がいけないならうちでどうにかするしかないかと思っていたところだ。この申し出を彼女からしてくれたのはいいことかもしれない。
「分かった、ネリスのことを明日私の家族に話してみるよ。さすがにこんなことを私1人じゃ決められないからさ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるネリス、態度からは悪い子に思えないなとルナは思った。
「気にしないで。それじゃ今日はもう襲いから一旦寝よう。ネリスさんも疲れたでしょ」
「ではお言葉に甘えて。後、呼ぶ時はネリスで大丈夫です」
「じゃあ今度からネリスって呼ぶね」
今後の方針を決めると2人はベッドに横になって深い眠りに落ちていった。
*
「ん……」
重い瞼をあげると日の光が入り込んでくる。ベッドから起き上がって隣を見る。
「なんか凄い違和感あるなあ……」
隣で寝ている黒髪の美しい少女――ネリスを見ながらルナは呟く。彼女は規則正しい寝息をたてながら心地良さそうに寝ていた。
「警戒感とかないわけじゃないだろうけれど……ぐっすりだね……」
彼女の様子にルナは少し呆れる。それだけ自分のことを信じてもらえたのかもしれないが。
「にしても、本当に綺麗だよね……」
改めて見るとネリスは本当に綺麗だと思う。同性の自分でも見取れてしまうくらいだ。
「……」
ルナは手を伸ばしてネリスの頬に触れてみる。柔らかい肌の感触が指先から伝わってきた。
「……どうやったらこんな綺麗な肌になるんだろう」
指をそのままネリスの頬に這わせながらルナは呟く、嫉妬心さえ湧いてきそうだ。
「……いけない、ネリスで遊ぶようなことはしちゃ駄目でしょう」
首を振って気分を切り替える、とりあえずネリスを起こさないと。
「ほらネリス、起きて。皆にあいさつ行く用意をしないと」
ルナはネリスの体を揺すって彼女を起こそうとする。
「ん……」
ネリスは軽く呻いた後、体を起こした。まだ眠いのか目を擦ってぼんやりしている。
「ふあ……おはようございます、ルナ」
「おはよう、ネリス」
眠たげなままネリスはルナへ挨拶する。なんというかこういう間の抜けた様子でさえ可愛く見える。
「ほら、まだ眠いみたいだけど昨日言ったように私の家族に挨拶にいかないといけないから付き合ってね」
「はい……」
ルナは眠そうなネリスの手をとって立ち上がらせる。ネリスはそれに従って立ち上がり歩き出した。しかしその足取りはおぼつかない。
「きゃっ……!」
「えっ!?」
ルナの後を歩いていたネリスがなにかに躓いてルナのほうへと倒れ込んでくる。2人は一緒にそのまま床に倒れこんでしまった。
「あ……」
「~~~~~っ!!」
「ご、ごめんなさい……! 私のせいで……!」
「い、いや、その、謝罪はいいから早く私の上から退いてくれない?」
「は、はい……!」
慌てたネリスがルナの上から退こうとするがそれと同時にルナの部屋の扉が開かれる。
「お姉ちゃん、なにか凄い音がしたけど……」
「あっ」
大きな音がしたせいで部屋を覗きにきたリリアが今の二人の状態を見て凍りついた。
「お姉ちゃんなにしてるの? それにその女の人は誰」
「はあ……」
ネリスとルナの家族の初めての接触は意図せず気まずい結果となってしまった。
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