第二章 アウロンゲの港町
1
私は深く眠ってしまっていたみたいだった。船長に肩を揺すられて、ヨルナとセスカに声をかけられて、漸く目を覚ました……らしい。おばさんが作ってくれたお酒はそこまで度数が高いものではなかったらしいのだが、私は疲れていたのか、すぐに全身まで回ってしまったらしい。
私が今まで見ていた景色も、全て夢で、あの船長の背中も、彼らがかけてくれた声も、その音も、風の匂いも強さも、私は、深い意識の中で、闇のすぐ近くで思い出していたらしかった。
私は何者なんだろう……ガンガンと痛む頭の中で、ただその文章だけがずっと、呪いのように、数日の間呪いのように私を苦しめていた。
船が港に帰り着いてから数日後、頭痛が少しは治りかけてきた頃に、私がベランダで夜の風を感じていると、来訪者があった。
下を見ていなかったので、気づかなかったけれど、一階を見ると、こちらを見上げて声をかけてくるヨルナの姿があった。懐には例の大きな遺跡の本。私はヨルナに頷きかけて、一階へと繋がる梯子を降りていった。
降りていくと、ヨルナは柔らかな微笑みを浮かべていた。何かがとっても嬉しいみたいに。
「イレイヌ、最近調子どう? イレイヌがお酒で倒れた日から、全然遊びに行けてなかったなって思って……」
私は彼の頭を撫でながら、微笑みを返して言った。
「もう大体大丈夫。介抱してくれてたんだよね。ありがとう、助かったよ。今は大体平気だから、もう気を遣わなくても大丈夫だよ」
「本当? じゃあ、僕のお話聞いてくれる? 家じゃ誰も僕のお話聞いてくれないんだ……」
私はタルヤおばさんとセスカの顔を思い浮かべながら答えた。
「……まあ、そうだろうね。あの二人だとね……私は聞いてあげるよ。ヨルナの話、面白いから好きだよ」
ヨルナの表情がパッと明るくなった。本当に嬉しそうだ。
「本当? じゃあ、今日はこの古文書の新しい遺跡についてのお話をさせてよ。ここ、すごいんだあ。氷の壁が一面を覆っていて、スイッチも氷漬けになってるの。で、そのスイッチを押す為には別の入り口から入って炎を焚かないといけないんだけど……」
私は彼の話を遮って、「ちょっと待った」と言って手を掲げたまま立ち上がった。
「ちょっとお茶を淹れてくるから、それまで待ってて」
静かになったヨルナは大人しく頷くと、一つしかないテーブルの前にちょこんと座り、ゆっくりと大きな古文書を開くと、静かに読み始めた。
私は彼が静かに本を読み始めたのを見計らって、お茶を淹れに台所へと立った。
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