短編ながら果てしない広がりを感じさせる名作

この作品は、肉親を失った方が読んだら、特に心に沁みる作品だろう。

子の世間を見る目は狭く、大抵が生まれ育った家庭という狭き隙間から覗くのが通常である。従って、子は親の背中を見て育つのだ。子どもが憧れを持つ職業は親の職業になりがちなのは、その世間を知る覗き穴の小ささと真っ先に見えるのが親の背中というところが実情だと思うし、親も子に、自分の良きところを伝え、悪しきところは是正した上で伝えようとする。

しかし、子は親の光輝くその特性こそが眩しく目に映る。

父の背中を追いかけようとする姿が、この物語の続きを読者に知りたくさせるような、短編とは思えない広がりのある作品である。