025 【光輝の妖精姫ルミナス】

「よし、それでは第二階層を見に行こう」


 俺はクリスティを伴い、新たに生成された第二階層、【彩光の花園】へと足を踏み入れた。


 そこは、俺の想像を遥かに超える、美しい世界だった。


 足元には、色とりどりの花々が咲き乱れ、まるで絨毯のように広がっている。

 太陽の光が花びらに反射して、キラキラと輝き、あたり一面を、明るく照らし出していた。

 風に乗って、甘い花の香りが漂ってくる。


 しかし、美しいのは見た目だけではない。

 この花園全体が強力な魔力を帯びているのがわかる。


「これが、【彩光の花園】か……」


「はい、アッシュ様。いかがでしょうか?」


 人間の姿のクリスティが誇らしげに胸を張る。


「素晴らしいな。花園全体が迷路のようになっていて、侵入者たちを惑わせることができるわけだな」


「その通りでございます」


 俺は周囲を見回しながら、今後の戦略を練る。

 この花園を、どのように活用すれば、最大限の効果を発揮できるだろうか?


「どのようなモンスターを配置されますか?」


「そうだな……。花園という環境を生かした、自然系のモンスターか。ヴェローナに対抗すべく、光属性のモンスターか……」


「さすがアッシュ様。良いアイディアだと思います」


「まずは、光の妖精だ。ヴェローナの闇属性に対抗できる、光属性のモンスターを増やしたい」


「かしこまりました。すぐに生成の準備をいたします」


 クリスティは花園の中心にある、ひときわ大きな光を放つ花の前に移動した。

 そして、その花に手をかざし、魔力を注ぎ込み始める。


 俺も体内の魔力を杖へと送り込む。


「アッシュ様、魔力、お借りします」


 俺は、頷き、さらに魔力を集中させた。


 杖の先端から、魔力の奔流が放出され、花へと注ぎ込まれていく。

 花は俺とクリスティの魔力を吸収し、さらに光を放ち始めた。


 光が徐々に人の形を成していく。

 小さな体、透き通る羽、そして金色の髪。

 美しい光の妖精が現れた。


「アッシュ様、これは……!」


 クリスティが驚きの声を上げる。


「光の妖精たちを統率し、使役する、上位の妖精……【光輝の妖精姫ルミナス】です。まさか、これほどの高位存在を生成できるとは……」


 どうやら、通常の光の妖精ではないようだ。


「アッシュ様の強大な魔力と、この花園の魔力が共鳴し、奇跡的な結果をもたらしたのでしょう。素晴らしいです、アッシュ様!」


 クリスティは、興奮した様子で、俺を称賛した。


「……そうか」


 俺は目の前に立つ光輝の妖精姫を見つめた。

 その美しさは、もはや、この世のものとは思えない。


「妖精姫よ、お前に名前を与えよう。ルミナス、それがお前の名前だ」


 俺は妖精姫に、そう告げた。


 ルミナスは俺の言葉に深くうなずいた。


「我が名はルミナス。アッシュ、そなたに忠誠を誓う」


 ルミナスは俺の前で膝をついた。


「ルミナス、顔を上げてくれ。私たちは対等なパートナーだ」


 俺はルミナスに手を差し伸べた。

 ルミナスはその手を取り、そっと立ち上がる。


「ルミナス、きみにはこの花園の管理と、光の妖精たちの統率を任せたい」


「承知」


 ルミナスは静かに、しかし力強く答えた。


「この花園に、どのような罠を仕掛けたら良いだろうか? ルミナスの考えを聞かせてほしい」


 ルミナスを、この花園の管理者にしようと考えていた。

 彼女の意見を聞くことは、今後の戦略を立てる上で非常に重要になる。


「この花園に自生する花々には、様々な効果を持たせることが可能だ」


 ルミナスは花園の一角を指差した。

 そこには、鮮やかな赤い花が咲き誇っている。


「あの赤い花には、強力な毒を。散布された花粉は、人々をたちまち麻痺させる」


 次に、ルミナスは別の場所を指差した。

 そこには、青い花が群生している。


「あの青い花には、眠りを誘う香りを。深く甘い眠りは、覚めることのない悪夢へと変わるだろう」


 そして最後に、ルミナスは白い花が咲き乱れる場所を指差した。


「あの白い花には幻覚を見せる力を。現実と虚構の区別がつかなくなった者は、自ら破滅へと向かうだろう」


 ルミナスの説明を聞き、俺は感嘆した。

 この花園は見た目の美しさとは裏腹に、恐ろしい罠の宝庫となる。


「素晴らしいな、ルミナス。この特性を利用しない手はない。だが、それだけでは不十分だ。侵入者は必ずや毒や眠り、幻覚への対策を講じてくるだろう。それに、冒険者がわざわざ花に触れるとも思えない」


「なるほど……」


ルミナスは少し考え込んだ。俺は、ルミナスにヒントを与えるように言葉を続けた。


「例えば、この花園の地形。一見平坦に見えるが、実は複雑な起伏に富んでいる。これを利用して、隠し部屋を作ってみてはどうだろうか?」


「隠し部屋?」とルミナス。


「ああ。そして、その隠し部屋の奥には豪華な宝箱を設置する。冒険者たちは、宝箱に目を奪われ、周囲への警戒を怠るだろう。そこが、罠の発動ポイントだ」


「なるほど……宝箱に夢中になっている隙に……」


 ルミナスは俺の言葉の意味を理解したようだ。


「その隠し部屋には、ルミナスが見せてくれた、あの毒花を大量に群生させる。部屋の壁、天井、床一面を、毒花で覆い尽くす」


「部屋全体に……」


ルミナスは驚きの表情を見せた。


「ああ。しかし、ただ花を置いただけでは、冒険者が触れるとは限らない。そこで特殊な魔法陣を部屋の床に描く。この魔法陣は花から毒を効率よく抽出し、気化させる効果がある」


「魔法陣で毒を気化……」


「侵入者が部屋に入り、宝箱を開けようとした瞬間、魔法陣が発動。部屋は花から発せられた毒で満たされ、逃げ場を失った侵入者は破滅を迎える」


「完璧な作戦です! アッシュ様!」クリスティが叫んだ。「さすがです! 敵をハメることにかけては世界一ですね!」


 これは褒められているのか?

 まあいいが……。」


「よし、ルミナス。この花園を難攻不落の要塞へと変えるぞ」


「承知した」


 ルミナスは深く頭を下げた。


「クリスティ、ルミナスと連携し、罠の設置を進めてくれ。私は新たなモンスターの生成を試みる」


「かしこまりました、アッシュ様」


 クリスティはルミナスの隣に立ち、何やら話し始めた。二人はすぐに打ち解けたようだ。


 俺はぼんやりと【彩光の花園】を眺めていた。

 小さな頃、ルゥナと一緒に花園で遊んだことがあった。

 そのとき、ルゥナは人形で遊んでいたっけ……。


 そうか。

 人形をモンスターにするのはどうだろうか。


――――――――――――――――――

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