第4話
コップになみなみと水と注いだあの人は喉を鳴らしながらそれを飲み干す。そしてようやく、何かを訴えるようなミミちゃんの鳴き声に耳を傾ける様子を見せた。
「なんや? 腹減ったんか? 朝に食ったやろうが。お前は餌食うしか脳が無いんか?」
ぶつくさ言いながらペットフードを取り出したあの人は、お皿にどっさりとそれを盛った。この人はミミちゃんを肥満児にするつもりなのかしら? きっちり量を計れとは言わないけれど、私が普段あげている量を見ていたらそんな馬鹿げた事にならないはずなのに。
「はあ、疲れたな」
そうぼやいたあの人が、ソファにどっかりと寝転がった。尻の下で喪服がくちゃくちゃになっている事にも気が付かず、すぐに鼾をかき始めたあの人を見て、遂に私は閉口してしまった。本当に駄目だわ、この人。
次の日も、次の日の次の日も、更にその次の日もずっと、あの人は傍若無人に日々を過ごした。
あまりに酷いので詳細は省かせていただくが、結論だけ申し上げると、私が大切に使っていたフライパン2つとお鍋が1つ駄目になって、いつか特別な日にすき焼きにしようと取っておいた冷凍の黒毛和牛は半分が炭と化してゴミ箱行きになり、お友達から頂いた綺麗なペアグラスはペアではなくなって、半年前に買い揃えた今治タオルは、粗品で頂くような薄っぺらいタオルと同じくらいの手触りになり、そして恐らくミミちゃんは1kg太った。
観察を初めて1カ月が経った。あの人は散らかったキッチンで白ご飯と漬物、そしてお味噌汁で朝食をとっている。昨日、ようやくお味噌汁には味噌だけではなく出汁も入れる事を知ったらしく、昨日までの「なんやこれ、まずいな」と言ったような愚痴が零れる事はない。
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