第35話 第二形態 蝦蛄男

「しかし、此奴は化け物か? 死ぬまでにこんなに殺しやがってよ……」


「薬中か何かじゃねぇのか?確か麻薬をやるとなかなか死ななくなるって聞いたぜ」


「だが、此奴は馬鹿だな!銃ぐらいならともかく、マシンガンに人間が敵うかってーの! 蜂の巣になって死んで、本当に気持ちわりぃ」


「本当なら、今夜あたり、あの女が犯し放題だったのによ! 此奴のせいで死体処理じゃねぇか……マジムカつく」


「本当、ついてねーな!」


「それで、これどうするよ? ほぼ肉の塊だぜ、俺は触るのは嫌だぞ」


「そうはいってもかたづけないと、兄貴たちが怖いぞ」


「本当に最後までムカつく奴だ」


殺された仲間の死体はまだ良い。


流石に肉片状態になった死体は気持ち悪くて仕方が無い。


兄貴たちが怖くて言えねーけど、此奴は..凄い奴じゃないか!


.俺達みたいな汚れ仕事じゃない。


命懸けで此処に乗り込み、恋人を助けきった。


命と引き換えに救い出しやがった。


無駄死にじゃねえよ!


此奴は勝ったんだ。


千人相手にな。


目的を果たした此奴。 女を逃がしてしまった俺達。


勝ったのは此奴。俺たちは負けたんだ。


◆◆◆


俺達がようやく我慢して肉片を集めようとした時だ。


バラバラだった肉片がまるで生き物の様に動きだした


そして一箇所に集まると卵のようなカプセルとなった。


卵の様なカプセルは徐々に大きくなっていく。


他にも千切れていた肉片が這うように卵に集まり吸収されていく。


崩れ落ちた脳みそまでが、まるで生き物のように卵の中に入り込んでいった。


何が起きたか解らない。


だが不味い事が起きる。その事を本能で悟った俺は銃で卵を撃った。


だがその弾は卵によって弾かれた。


本当に不味い気がする。


銃が効かないなら、マシンガンしかねー。


俺達は、直ぐに2丁のマシンガンを持ってきて、弾を撃ち込んだ。


ガガガガガガガガガガガガ


がガガガガガガガガガガガガッ


だが無数の弾丸が撃ち込まれるも全て卵に阻まれ一発とも刺さりもしない。


不味いぞ……何が起きるかわからない。


だが、ただただ、恐怖を感じ目を離せなかった。


◆◆◆


気がつくと僕は卵の中にいた。


僕は死んだ筈だ……なのに何故生きている。


だけど、この姿は……そう、まるで蝦蛄(しゃこ)だ。


『ブラックローズのナンバー2が只の強化人間なわけはない』


そう蟹元帥から聞いた事がある。


幹部ともなれば裏切った仲間の粛正もあるから『幹部ように開発した特殊な体』なのかもしれない。


そう言っていた。


姉さんに聞いても教えてくれなかったけど……僕には第二形態があったのか……


それはが、この蝦蛄人間だったのか。


蝦蛄は強い。


この体は恐らく蝦蛄の中でも最強のモンハナシャコ。


蝦蛄ならバッタだろうがカブトムシだろうが、どんな改造人間も粛正出来る。


そう姉さんが言っていた。


第二形態があるのなら


姉さん……いつ、僕を再改造してくれたんだろう。


『姉さん、ありがとう』


この姿になった僕なら……例え特撮ヒーロが目の前にいてもきっと粛正可能だ。


「さぁ、第二ラウンド開始だ..」


周りの人間は恐ろしい者を見るような目で見ている。


そりゃそうだ、肉片になった人間が再生して化け物として生き返ったんだ。


そりゃ恐ろしいだろう。


「お前は何者なんだっ! 化け物!」


「来るなぁーー来るんじゃねー」


「ああっ……ああっああぁぁぁぁーー」


周りは阿鼻叫喚だ。


僕は何者なのだろうか? 一番近い答えは……


「僕は、ブラックローズ 副首領 ブラックソードだ! そしてこの姿こそが恐怖の真の姿、蝦蛄男だぁぁぁぁぁ!」


もう、既に無い組織……それでもこの姿はそれ以外無い。


ブラックローズの科学の結晶。


改造人間の幹部怪人。


さぁ、粛正の時間だ。


僕は手加減などしない。


さっき一回死んだ。


自分だけでなく大切な人すら死ぬ可能性があった。


「何のトリックだ? 中二病かお前?」


敵を前に馬鹿な事を……逃げるか、攻撃するかしろ。


馬鹿が……



僕は軽く手を振るった。


「馬鹿か? そんな所で手を振ったって……えっ」


手の届く場所に居た、男5名は真二つになり死んだ。


当たり前だ、僕は蝦蛄の改造人間だ。


あの小さな体ですら、人間指をへし折り、大きな蟹の甲羅すら破壊する。


分厚い水槽すら粉砕する蝦蛄。


その大きさが人程になれば……人間など簡単に破壊出来る。


「ひっひっ……化け物が生き返りやがった……たたたた、たす」


もう、遅い、この場に居る人間は全員殺すと決めた。


「人殺しならプライド位持ちなよ? みっともない!」


人を殺す様な人間なら、自分が殺されても仕方ない。


その位の覚悟が無いならやるべきじゃない


見逃すわけがない……手を軽く一振り……首が飛ぶ..


周りに居た者は全員奥へと逃げた。


都合が良い。


僕は逆に外に向かった。


この屋敷は岬に立っている。


そして後ろは断崖絶壁だ。


なら、岬事叩き壊せば、海に落下する。


この高さから屋敷ごと海に叩き込めば、生き残る事は無いだろう。


「はぁぁぁぁーーー」


思いっきり岬にパンチに叩きつけた。


岬は簡単に罅が入り、そのまま屋敷事海に落ちていった。


高さはどう見ても百メートル近くある。


これなら、きっとだれも生き残れないだろう。



落ちる屋敷から悲鳴が聞こえてくるが……


逃げる場所も時間もない。


間もなく屋敷は海に叩きつけられ……波にのまれていった。


◆◆◆


これで、終わらせる訳には行かない。


此奴らに命じた奴がいる。


そいつ等もどうにかしなければ、この話はまだ終わらない。


『関西連合煉獄会』と話をつけなければ又同じ事が起きるかも知れない。


だから此処で手を止めるわけにはいかない。


だが、流石に皆殺しと言うわけには行かないだろう。


万単位の人間を殺せば流石に目立つ。


それに『ブラックローズを壊滅させた組織』も出てくる可能性がある。


だから、落としどころを考えないといけない。


僕は関西に来た。



関西連合煉獄会に公衆電話から電話をした。


『組長さん居ますか?』


『あん? お前誰だ?』


『竜ケ崎組のゆかりの 白木翼って言います、アンタたちが関東に送り込んだ1000人はもう死んでいます』


『貴様、爆薬でも使ったのかよ、極道の風上にもおけねー』


どうやらもう情報は伝わっているようだ。


『僕はテロリストなんで極道じゃありません! 報酬次第で戦争を仕掛ける戦争屋ですよ? それで組長に変わって貰えませんか?』


途中、何人かを得て組長に変わった。


『戦争屋とか言ったな? お前お金次第じゃ、こっちに着くのか?』


『つきませんよ! ただ、これから起こる事を予告しに電話しただけです。関西サンシャインタワービルを破壊します! これで今回の戦争は終わりにして下さい!これ以上来るなら皆殺しにします……これは警告です』


『待て、冗談は……』


話しを切り上げ、途中で電話をきった。


これで良い、まだ、建設途中の関西サンシャインタワービルは地上85階でショッピングモールも併設した巨大なビルだ。


ここを作る出資は『関西連合煉獄会の後ろ盾の企業』が出している。


壊されたらかなり痛い筈だ。


幸い、今日は休日、余り人は居ない。


居たとしても関西連合煉獄会の関係者心は痛まない。


工事現場に入り込み、鉄骨という鉄骨を片端から破壊していく。


僕は万が一あっても蝦蛄男になっているから大丈夫だろう。


途中、何人か人に会ったが軽く殴って、外に放り出した。怪我位はしているが死にはしないだろう。


何本かの柱を破壊した時にぐらつきを感じた。


そろそろ良いだろう。


僕はビルを後にした。


◆◆◆


「何だ、組長が言うから見に来たが何も起きて無いじゃないか?」


「そりゃそうですよ、此処を爆破するなら、相当な爆薬が必要ですよ。そんな量の爆薬はそう簡単に持ち込めません」


だが、可笑しな事にビルが揺らぎだした。


「気のせいか、ビルが揺れているような気がするが……」


「嘘だろう! ビルが……ビルが倒れてくる……本当に……本当に破壊されたのか」


土埃をあげて関西サンシャインタワービルは倒れていった。


これで、手を引かないなら、今度は殺すしかなくなる。


相手もそこ迄の馬鹿じゃないだろう。




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