第29話 価値

「えっ、あの人誰、転校生なのかな?」


「あんな綺麗な人見たこと無い」


「堪らない、堪りませんわ」



外見一つで態度が変わる。


こんな外見になんの価値があるのか僕には解らない。


火炎放射で焼かれたり、マシンガンで撃たれたら、失われてしまう、そんな物だ。


外見がそんなに気になるなら整形で幾らでも手に入る。


確かに、僕は美しいのかも知れない。


だが、この容姿は『本当の僕の姿か解らない』


本当の僕は雪の降る日に捨てられた子供。


その時の僕は手足に壊死を起こして切断手術と共に改造手術を受けた。


姉さんは語らないが、恐らくこの容姿は姉さんの好みになるように調節された姿だ。


つまり、この体の大半は只の作り物とも言える。


僕が蟹元帥みたいな調整を受けていたら?


恐らく、僕の姿は一般人が怖がるような怪人になっていた筈だ。


そうしたらきっと……誰もが僕を見て恐怖し、逃げまどい石をぶつけるだろう。


そこ迄いかなくても、僕がごく平凡な容姿だったら……彼らはどう動くのだろうか?


きっと相手にしない。


僕の死んでしまった仲間は怪人や戦闘員が多い。


その姿は異形そのもの。


彼等が見たらおぞましく、怖い存在だ。


僕が美しい姿なのは偶々『姉』がそう望んだからに過ぎない。


僕としては、蟹元帥を上回る様な存在に成りたいという欲望はあった。


実際に途中で終わってしまったが、蟹よりも強い力を持つ蝦蛄(しゃこ)の能力の取り込みや機械化人間の研究プランもあった。


僕が蝦蛄人間だったら、体が機械であったら……きっと、彼女達は僕の為には騒がないだろう。


だからこそ、彼女達とは交差する未来は無い。


だが、何故だろうか?


麗美さん達だけは、それでも友達でいてくれる。


そんな気がしてならない。


だが、他の人間は……


「黒木くん、凄いね!モデル見たいだね。うんその方がカッコ良いよ」


「そう、ありがとう、ちょっとイメージを変えてみたんだ」


はははっそれがなに?


「凄いなぁ、良かったらお話ししない?」


「クラスメイトなんだから何時でも話し掛けてくれてもいいよ!」


クラスが同じなんだから、話す位いつでも話かければ良いのに……


「そう、そうだよね」


「あの写真撮っても良い?」


「どうぞ」


多分、本当に意味で友達には多分なれない……

だが、この騒ぎも『姉のセンス』の良さを解って貰えた。


そう思えばそう悪くない。


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