第24話 三者三様に動きだす。

『麗美SIDE』


私は今荷造りしています。


麗美は剣さんの所に押し掛けるつもりです。


きっと大好きなお姉さまに似た私ですから拒まれることは無いでしょう。


お父さまが認めた以上、もう何も障害はありません。


やっと見つけた未来の旦那様、もうこの愛は止まりませんわ。


「あんた、何してんの?」


お母様に見つかりましたわ。


堂々としているのだから、当たり前と言えば当たり前ですわね。


「お母さま、荷造りしていますのよ? 何時でも剣様の所に行けます様に」


「全く、こういう所は私に似たんだか、龍三さんに似たんだか、確かに恋も戦いも先手必勝がいい。早く動いた方が良いわ。まして、あれだけの男だ、他にも狙っている女は多いだろう。見た感じ小太刀ちゃんも亜美ちゃんも狙っているみたいだし、負けるんじゃないよ!」


「はい、お母さまっ! 麗美は負けませんわ」


「あれは良いわ! 美形で頭が切れて度胸があり、腕っぷしもある。まるで、龍三さんに虎雄に鳳凰の全部の才能がある。絶対に婿に欲しいわ。そうね、剣さんなら私も賛成だわ、お父さんには私も一緒に言ってあげるから、さっさと既成事実でも作って物にしちゃいなさいな!」


「勿論、そのつもりですわ。私の全てはもう剣様の物ですから頑張って暖かい家族が作れるように頑張りますわ」


「頑張りなさい、私もあの子なら息子にするのに異存はありませんからね」



『この子の執念は龍三さん譲り、しつこさは私譲り、こうなったらもう誰にも止まらないわね。今の麗美ならもう何もしなくても確実に何処までも追いかけていくでしょう……しかしこの娘が様ね……余程気に入ったんだね』



『小太刀SIDE』


「ねぇ、私の言った通りだったでしょう?」


「馬鹿言うな、お前の言っていた、何倍も凄い男じゃ無いか! 凄いな黒木くんは」


彼奴はスゲー男だ、齢が近ければ俺が兄貴と呼びたい位だ、本家に涼し気に入ってきて委縮せずに話す、あんな奴は2人といねーよ、良く俺を男の中の男って組の奴はいうが、彼奴の方が二枚も三枚も上だ。


「でしょう、本当に凄い男なんだよ! 剣くんはね」


「そうだな、俺も彼奴ならお前が付き合う相手に問題は無いな、母さんも気に入っていた、それでお前は何時行動を起こすんだ?」


「親父、何時って何だよ」


男らしいと言うか何というか、恋愛とは無縁の生活を送っていたから解らないのか?まぁ、こんな育て方した、俺や母さんが悪いのか……


「あのよ、小太刀そこに座れ」


「解ったよ、それで」


「もう、俺も母さんも交際は許したんだぞ? これからどうしたいか、早く決めないといけないんだ!解らないのか?」


「それって」


「だから、さっさと行動起こせって事だ、普通に付き合うもよし、体使って物にするもよし、早く物にしちまえって事だ」


本当に鈍い、静流が認めるような男で俺すら気にいるような男。他の女が放っておくわけ無いだろうが! 此処にはお嬢というとんでもないライバルに亜美ちゃんも居るんだぜ、あの分じゃ親父も気に入ったみたいだから『お嬢の婿にしたいと言い出しかねない』もう戦争は始まっているんだ! 解っていないのか?


「親父、まだそこ迄は早いって!」


早くねーよ。


「そうか、だがお嬢や亜美ちゃんはどうかな? 俺は急いだ方が良いと思うがな、まぁお前の恋愛だ好きにしろ! だが俺が気に入る様な奴がモテない訳がねぇ、それだけは忘れるなよ!」


「解ったよ」


本当の所、俺は困っている。『彼奴は出来過ぎだ』小太刀が気に入るのは解る。だが彼奴は『竜ケ崎組の跡取り』にも申し分ない。そう考えたらお嬢と結婚すればこの組は安泰だ。若頭として行動するか、小太刀の親父として行動するか……頭が痛くなってきたな。


それに、さっさと行動しないと……お前のライバルは、あのお嬢だぞ!



『亜美SIDE』


「パパぁ、何時になったら私は剣ちゃんと付き合えるのよ、いい加減にして、麗美ちゃんにとられちゃうよ」


「うん、出来るだけ早目にパパが彼の家に遊びに行ってくるから、その後ね」


あの子は確かに凄い、度胸、腕力、知力本当にぴか一だ。だがあの狂気の目が気になる。野獣の様な目。あの目は麗美お嬢様と同じ魔性だ。見た瞬間から魅了される。そして決して平穏ではいられない。 僕は腕力が無い、頭脳一つでのし上がった経済ヤクザだ。だからこそ人の強さに敏感だ!人を殺す時にもどうしたら殺せるのか綿密に考える。その僕の予想を上回り彼奴は勝った。彼奴の魔性は麗美お嬢さまを越え、組長以上。しかも、組長が狼だとしたらライオン並みかもしれない。 僕はそういう人間が好きだ。だがそれは個人としての話。僕が若ければ『彼奴の片腕に成りたい』そう思ったかも知れない位魅力的だ。だが娘の恋人、結婚相手となると歓迎など出来ない。 決してあの手のタイプは平穏な生活など送れないタイプだ。



「そんな事言っていたら、麗美ちゃんや小太刀ちゃんに取られちゃうよ!」


その方が良いかもな。


つい、そう考えてしまうな。


仕方ない、嘘をつくしかないな


「亜美ちゃん、聞いて欲しい、僕はあの子が結婚相手に相応しいかどうか見極めたいんだ! だから、時間をくれないか?」


「貴方、何を言っているのかしら? 亜美も馬鹿なの?」


「唄子さん」


「ママ」


「剣ちゃんでしょう? あれは凄く良い男よ、さっさと股開いて子供でも作って既成事実をつくっちゃいなさい!」


「唄子さん幾らなんでもそれは認められない」


「ママ、幾ら何でも直ぐにそんな関係は早すぎるよ」


「亜美、あんた馬鹿なの? メルエスのパーキン250万のバックを簡単にプレゼントする高校生なんて二人といないわ。元銀座の最年少ママだった私が保証する。あの男は一流よ!貴方のパパ以上にね。 もし私が若ければ、私が狙いたい位だわ」


「ママ本当?」


「唄子さん、そんな炊きつけないで」


「私の目を信じないの? しがない三流会社の課長だった貴方が、一流になると見抜いたのよ? 上場企業の御曹司を振って貴方を選んだの忘れた? 人を見る目だけは誰にも負けないわ。実際に貴方は鳳凰グループの社長になったし、此処の幹部になったでしょう!」


「そう言われると困るが、亜美はまだ高校生だ。幾らなんでも早すぎる」


「ママ、幾ら何でもそんな急にはね、そりゃ考えなくも無いよ。カッコ良いし好きだもん。だけど普通にデートしてそこからだと思う」


「あのさぁ、亜美はママと男を取り合って勝てるかな? どう思う?」


「ママ、まさか剣ちゃんに手を出す気なの?」


「唄子さん、違うよね」


「あはははっ、家族がいなければそうするかもね? でも今の私は鳳凰さんも亜美も居るからしない。だけど、彼はまだ高校生だけど、もし彼が銀座や六本木のクラブに行ったら、見抜く娘は必ず狙うわ。一流のオーラが出てる。そういうレベルの男よ?そう考えたら早期決戦しかないとママは思うな……」


「早目に、頑張ってみるよ、ママありがとう」


「まぁ頑張るのね」



『本当に馬鹿な子、残念ながらもう亜美、貴方には勝ち目は無いわ、麗美お嬢さんは多分あんたみたいに躊躇なんかしない。やっと見つけた理想の男。出会えない筈の理想の男に出会ってしまった麗美お嬢様。今迄妥協しても出会えなかった恋人……それなのに自分の全てを満たす様な男に出会ってしまった。自分の全てを使って手にしようとするに決まっている。体も心も全部使って、悪いけどもう貴方には勝ち目は無いわ。この子本当に私の子なのかしら? 血が薄いとしか思えないわね。まぁ良い子なんだけどさぁ、私ならこんな一流の男を前にしたら躊躇せず、すぐ動くわ』



「はい、ママ」



三者三様に物語は動き出した。


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