第16話 竜ケ崎麗美
奈々子から話を聞いてなんで不味いか解った。
陸上部の女子が下着みたいな服着て走っているから、それを覗いているように思われていたみたいだ。
前にも聞いたけど、見られたくないならなんでそんな恰好しているんだよ。
『そんな服で走るな』と言いたいが、周りからそういう目で見られるのは心外だ。
僕が他に行けば良い……流石に周りから白い目で見られてまで此処を死守する意味はない。
しかし、僕は学生として何を頑張れば良いのだろうか?
スポーツはズルしている様な物だから、尤も僕がやってはいけない物だ。
頭を使うのもIQが強化された僕が一般人と勝負するのは……うんズルだ。
これじゃ一体僕は何をして良いのか解らない。
とはいえ、少しは学生を楽しまないと、姉さんの意向に背く事になる。
仕方ないな、何かしら考えるか。
放課後、何時もの場所を諦めた僕は適当に歩いていた。
別に何かするでもなく、あても無く歩いていると三人の女の子が目に入った。
その中心にいる女の子に自然と目がいく。
何処が似ているという訳では無い。
外見は全く違う……なのに何故だろう。
つい口から声が出た。
「姉さん」
その女の子の姿形は姉さんとは全然違う。
だけど、その仕草は姉の胡桃を彷彿させた。
姉は背が低いし、目は垂れ目だし優しい感じだ。
目の前の女の子は目が吊り上がっていて背が高い。
ややウエーブの掛かった髪をしていて大人っぽい。
どう見ても同じに感じる筈はない。
だが、何故だろうか? どうしても姉さんと重なり、目が離せなくなる。
そのまま見ていると目が合ってしまった。
彼女はこちらの方にツカツカと不機嫌そうに歩いて来た。
「貴方、何で私を見ていますの? 人をジロジロ見るなんて失礼じゃありませんか?」
横の2人も怖そうな顔をしてこちらを見ている。
確かに人の顔をしげしげ見るのは礼儀として良くない。
素直に謝まるべきだ。
「すみません、最近姉を亡くしまして、貴方の雰囲気が姉に似ていたのでつい見入ってしまいました」
何故か素直に本当の事が口から出た。
横の2人が何か言いかけたが彼女がそれを、手で制した。
「貴方はもしかしてこの辺りにお住まいじゃないのですか?」
何故、そんな事を聞くんだろう。
「今は近くですが、最近引っ越してきたばかりです」
「そうなの? それじゃ麗美の事を知っていて見ていたたわけじゃないんだ、なら良いや」
「そうなのか、なら問題はないな」
横の二人の女の子がそんな事を言う。
どう言う事だろう?
「そうでしたか、それなら問題はありませんわ、私が姉に似ているっていうならあまり時間が無くて申し訳ございませんが5分で宜しければお話ししても良いですわ」
何故か惹かれるものがある。
だから、その提案に乗る事にした。
奈々子と話しているのとは違う、しいて言うなら昔の組織の人間としている様な気がする。
どことなく姉を彷彿させる女の子。
この手の会話に飢えていた僕は夢中になって話した。
只の会話が本当に楽しく感じる。
5分という時間はあっと言う間に過ぎていった。
「話してくれて有難うございました、僕の名前は黒木剣と申します」
「そう、私は竜ケ崎麗美です、それじゃごきげんよう」
「私は北条小太刀だ」
「私はね三上亜美って言います、それじゃぁね」
組織を失ってから、初めて自分から友達になりたいと思った。
こんな感情初めてだ。
横の二人も麗美ほどじゃないけど、凄く好感が持てた。
何故か分からない……
「あの、またお話しさせて頂いて良いでしょうか?」
「クスッ、そうね! 貴方が今度会った時も同じ様に話したいって思うなら良いですわ」
「まぁその度胸があればな」
「そうそう」
何を言っているのか解らない。
だけど、また話かけても良い。
そういう事だよな。
「それじゃまた今度...」
彼女達は振り返らずにそのまま歩いていき黒塗りの車に乗って去っていった。
◆◆◆
『麗美SIDE』
「麗美にお姉さんが似ていたか? どんだけ、怖いお姉さんだったのかな?」
「小太刀煩いですわよ、久々の楽しい気持ちが台無しですわ」
「まぁ普通に話してきた男の子は久しぶりだからね」
「なぁあの子、また話かけてくるかな?」
「もう無いに決まっていますわ」
「そんな度胸ある子いないもんね」
「そうかな、私はあの子は特別な気がするな?」
「有りえませんわ!絶対に」
「そうだね!亜美もやはり話しかけて来ない方に1票」
「なら、そうだ、もしあの子がまた話しかけて来たら友達になるって事にしない?」
「まぁあり得ませんが、私達の事を知っても私を『姉』の様に思ってくれるなら良いですわよ」
「まぁあり得ないと思うけど、もしそうなら亜美も友達になってあげても良いよ」
「だけど」
「そうね」
「そうよ」
この辺りを治める広域指定暴力組織 竜ケ崎組、その組長と幹部が私達の親。
そんな私達と友達になりたい。
そんな奇特な人居ませんわね。
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