第14話 パワハラ セクハラ
「良いよ、気にしないで、コーチにはなりたくないな。デートもしないで良いからね。僕が勝ったんだからこれで終わり……良いよね? 」
僕が勝ったんだから、うん。
関わりたくない。
「本当にごめんなさい、私が悪かったわ、あれだけ速く走れるんだから、お遊びと言われても仕方ないわ!」
何だか様子がおかしいな、どういった吹き回しだ。
「解ってくれれば良いんだよ、それじゃ」
そのまま立ち去ろうとしたら、また腕を掴まれた。
「待ってよ! あなたオリンピックを目指しているんでしょう? 本当に凄いわね」
そんな物は目指していない。
なんでまた勝手に決めつけるかな。
僕が出たら、確実に金メダル、そんな分かり切った勝負面白くも何ともない。
「そんな物は目指して無いよ、ただ誰よりも速く走りたい、そう思っていた時があっただけだよ……」
そう、僕にもそんな時代はあった。
僕は改造人間ではあるが、生体改造系、特撮ヒーローの様なサイボーグでは無い。
しいて言うなら、ライオンや熊の様に人間より優れた体力がある、それが一番近いかも知れない。
だが、サイボーグ型とは違い、力を身に着けるまでは体を鍛える必要があった。
尤も、ゴールは決まっていたからそんなに苦じゃない。
今現在は……もう限界まで鍛えたから。
努力なんてする必要は無い。
「そんな、そんな理由で体を鍛えていたの?」
「名誉や勝つ事を考えるなんて不純だ。ただ誰よりも速く走りたい、その方が純粋だと思う」
「そう、そういえば何時からだろう、私は純粋に走る事をしなくなっていた気がするわ」
「それじゃ、僕は行くね」
「待って、それでお願いがあるの……陸上部のコーチ、引き受けてくれないなかな?」
悪いが僕には無理だな。
「それは出来ないよ」
「何でよっ! 少し位教えてくれたって良いじゃない?」
「僕はパワハラで、ブラックだからね」
「パワハラ、ブラック?」
「そう、例えばそうだな、食事は決まった物以外一切口にさせない。決まったメニューは例え体を壊そうがやって貰う。全てに置いて絶対服従、自由な時間は一切なし、テレビもスマホを触る時間一切なし、体罰は当たりまえ……そういう方法でしか僕は教えられない」
「そんな事、強制させるの? 最低、それで良く訴えられなかったね」
ブラックローズでは当たり前の事だ。
勿論、これが世間一般的な常識から外れている事は解る。
そのままでは答えられないな。
「確かにパワハラで、ブラックだけど? たった1人それをしても許される人がいる」
「最低な事を黒木くんはしていたんだね、その被害者が可哀想だよ」
「だけど、自分で自分自身に行う分には誰にも文句は言えないでしょう?」
「自分自身?」
「そう自分自身に地獄の様な訓練を課した所で.問題はないよね?」
「確かに自分で自分にするなら、モラハラやパワハラは関係ないわ」
「だから、僕が行った事を他の人に行えば、パワハラ、モラハラ、セクハラになるから指導は出来ない」
「そうなんだ、解ったわ」
「あと、デートは辞退する。ただ僕は校庭でぼーっとしているのが好きだから次回から文句言わないでくれればそれで良い」
「そう、わかったわ」
「あなたがストイックなのは解ったわ。話してみて自分がどれだけ駄目なのかもよく分った。長く話すと悔しくなるから、.デートを辞退してくれて良かったわ」
「そうそれじゃ、僕はこれで行くから」
今度は引き止められなかったのでそのまま校庭を後にした。
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