第12話 掃除屋の憂鬱


久々にブラックローズの剣さんから仕事の依頼を貰った。


あの組織は自分達で基本、隠蔽工作を行うが、偶にこんな風に仕事を回してくる事がある。


だが、その仕事は……余り好ましくない。


「ボス、ブラックローズ関係の仕事ですか?」


「そうだ」


「あんな現場は行きたくない……死体の処理の仕事はいい、だがあの組織絡みの現場は汚なすぎる」


誰だってブラックローズの仕事なんてしたく無い。


だが、あの組織絡みの仕事は報酬が高い。


それにあの組織は、俺たちやヤクザなんて比べ物にならない闇を抱えている。


敵に回せば殺される可能性すらある。


友好関係を崩すわけにはいかない。


「すみません、俺もパスしたいけど。駄目なんですよね?」


「支払いが良いんだ、悪いけど来てくれ! 報酬は弾むからな」


俺は従業員2人を連れて現場に向かった。


幾ら人通りが無いとはいえ人の生活圏内、それなりにカモフラージュしないとまずい。


水道局の車に偽装した大きなバンと作業車で駆けつけた。


三角ポールとバーを立てて通行止めの状態にし、偽物の作業許可看板を立てて マンホールを囲む様にブルーシートで作ったパネルで周りから見えないようにして準備は終わる。


「確かにマンホールに死体を隠すのは都会なら定番だが、相変わらず殺し方がえぐい」


「これは酷いな、うぷっ、吐き気がする。普通なら只刺された、只銃で撃たれた死体回収と処理で良いんだが……この処理は時間がかかりそうだ……うわぁ脳味噌が飛び出ている」


これが一番、ブラックローズの処理が嫌われる理由だ。


まるで獣に襲われた様に、何時も死体が惨殺死体、幾ら報酬が良い仕事とはいえやりたいとは思わない。


「うぷっ、これを抱き抱えて車に載せないと行かないのか」


「うぐっ、はぁはぁ、飯抜いてきて良かった、飯食ってきていたら吐いていたな」


3体の惨殺死体を車に載せて、マンホールの中と周辺を薬品で綺麗に洗う。


これで警察の鑑識が出張ってきても、もう此処からは手掛かりは出ない。


「おい、1人、水飲み場の方も頼む」


「あっ俺行きます」


これで、完璧に三人の死んだ事の隠蔽はすんだ……


こんな酷い死に方俺はしたく無い。


だから、ブラックローズとは友好関係を壊す事は出来ない。


◆◆◆


「剣お兄ちゃん、本当に大丈夫かなぁ? ああいう人が約束を守るとは思えないんだけど」


「絶対に大丈夫だから気にしないで良いよ? 知っている人の知り合いだから、もう二度と奈々子ちゃんに近寄らない様に言って置いたから」


「本当に? だけど奈々子凄く怖い」



もう殺したから大丈夫と言えたら、凄く楽なんだけどな。


確かに、普通の人間からしたら『あの脅し』は怖いのかも知れない。



「それじゃ、もし嫌じゃ無いなら暫く送り迎いしてあげようか?」


「本当に? 有難うございます」



別に何もやる事が無いからね。


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