第10話 姉妹の会話

「奈々子、あんた一体どうしちゃったの?」


私は、何があったのか信じられなかった。


まさか、あの奈々子が急に男の子を好きになるなんて信じられない。


しかも、どう考えても尽くしている。


奈々子が尽くされる姿は思いついても、あんな風に尽くす姿を見るなんて……実際に見た今でも信じられない。


だから、家に帰ってから、奈々子の部屋に行ってみたの。


トントントン。


「奈々子、今良いかな?」



「なぁに? お姉ちゃん?」


奈々子……おかしくなっちゃったの……


ノート一面は『黒木剣』って黒木くんの名前で埋め尽くされている。


それでも、私は奈々子が黒木くんが好きというのが信じられなかった。


「黒木くんの事だけど……本気なの?」


「本気に決まっているじゃない! お姉ちゃん! そうじゃ無ければ奈々子、教室まで押しかけたりしないし!」


一体何があったと言うのよ……


こんなのおかしすぎる。


いつものクールで塩対応の奈々子じゃない。


「あの黒木くんだよ! 奈々子の好みと違うじゃない……あれなら今迄言い寄ってきた男の子の方がまだましじゃない?」


「お姉ちゃん、男の子は顔だけじゃ無いよ? それに、それ剣お兄ちゃんに失礼だよ! 剣お兄ちゃん、お父さんを助けようとしたり、優しくて凄く良い人じゃない! お姉ちゃんは本当に見る目ないね」


いや、外見至上主義の奈々子に言われたくないし……


だけど、それより、奈々子は私より面食い。そして絶対にこんな可愛い事言わない。


おかしい、あんなに酷い性格の奈々子が黒木くんにだけ優しい。


まさか黒木くんに何かされたの?


いや、脅される訳はない、奈々子が脅すなら解るけど、そんなたまでは無いのは知っている。


もしかして黒魔法でも黒木くんが使えるとか?


そんな訳流石に無い。


だけど、このまま黒木くんと奈々子が付き合ってくれるなら、もう私の恋愛の邪魔を奈々子にされることは無いから……うん、これは凄く良い事だ。


「奈々子が本気ならいいや。応援してあげる! お弁当の作り方とかお姉ちゃんが教えてあげるから頑張ってね」


「うん、お姉ちゃんは料理だけは上手だから、本当に助かるよ。あと剣お兄ちゃんについての情報も頂戴!」


こう言う所、本当に可愛くない。


だけど……これで私もちゃんとした恋愛が出来るかも知れない。


「うん、分かったよ! だけど、黒木くん教室では余り喋らないから、あんまり良く知らないんだよね」


「喋らないってお姉ちゃん剣お兄ちゃんに嫌われているの?」


そう……じゃないと思う。


「違うわよ、奈々子、お姉ちゃんはクラスの人気者だよ……黒木くんが浮いているんだよ」


「えっ!? そうなんだ!」


「あんな感じで暗いからね。黒木くんクラスで浮いているんだ」


「馬鹿だなぁ~お姉ちゃん。ああいうのは『影があって素敵』って言うんだよ。それでお姉ちゃん、剣お兄ちゃんと仲の良い友達って居ないの?」


「うん、少なくとも私の知る限りは居ないと思う」


「そうなんだ~良かったぁ」


これは完全にいかれちゃっているんじゃないかなぁ。


気のせいか、目もハートマークに見える。


はっきり言って奈々子は恋愛強者だ、我が妹ながらかなりの美少女。


振られる事は無いと思う。


野球部のキャプテン、中等部の生徒会長、サッカー部のレギュラー、全部振った。撃墜王女の異名を持つ奈々子が選んだのが黒木くん?


まぁいいけどさぁ。


本当に何があったんだろう?


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