第3話 ホテルマンと支配人


しかし、さっきのお客様は凄かった。


だされたカードを見た瞬間目を疑った。


まだ若いというのに、ブラックカードだった。


家族カードではなく本人のカードだった。


只のブラックカードならまだ驚かない。


持っていたブラックカードは『最高の一枚』と言われる会社のブラックカードで、金持ちであっても審査になかなか受からない事で有名なカードだった。


審査が恐ろしく厳しく、一般カードですら持ち家、年収2千万が条件。


そこのブラックカードだから、とんでもない資産家という事になる。


なにしろ、あのカードには上限が無い。


購入したければ、家どころか島すら買える。


飛行機でもクルーザーでも買えない物は無いと言われるカードだ。


そんなカードをあのお客様は使った。


そしてこのチップ、札束2つ200万円ある。


日本なら高級ホテルでも考えられないが、海外ではよりよいサービスを受ける為にコンセルジュに高額なチップを渡したり、高額な物をプレゼントする話がある。


パーキンの三百万のバッグをコンセルジュにプレゼントした......そんな話も聞いた事がある。


だが、このホテルは高級ではあるがそこ迄ではない。


状況を考えると黒木様はVIPで間違いない。


それも日本という枠でなく世界と言う枠でのVIP。


そんな方で無ければ、今時チップを纏めて200万なんて渡す訳が無い。


このゴールドプリンスホテルは高級ホテルだ。


だが、別に星を持っているわけじゃなく、こんな凄いお客様を扱ったことは無い。



だからこそ金城支配人に急ぎ報告をする必要がある。


今日は金城支配人は出掛けているから電話をした



「すみません、至急のお話があります」


「何かトラブルか?」


「実は......」


私は、黒木様について今日あった事を報告し対応を聞いた。


金城支配人は......


「お金を返す事は当ホテルがそこ迄のもてなしが出来ないと認めた事になる、恐らくそのお客様は他国の高級ホテルと同等に扱ってくれたのだ」


確かにその通りだ。


「それではどうすれば良いのでしょうか?」


だが、どう対応すれば良い......


「そのチップは従業員全員で分けなさい、その代わり最高のサービスを心掛けるようにしなさい」


「解りました」



高級ホテルと同じに扱ってくれたんだ。


ならば、その期待に応えなければな........ガッカリさせぬように頑張るしかない。


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