私いま、ほんっとうにしあわせ!
……今の話、まじでなんだったの?
意味わかんないんだけど!?
なんでねむママがあんなことをしたのかわかんないし、ねむをそこまで溺愛してる意味もわかんない。
いくら子供が心配だからって一緒に生徒になるとか……どんな親だよ!
結婚するって約束をずっと本気にしてたのもやばいし!
ねむがあんなヤツになったのも納得だ。
同情はしないけど。
まあ、もう関わることはないでしょ。
触らぬ神に祟りなしって言うしね。
さて……。
あたしはまったく状況を飲み込めてない石成さんの方を振り返る。
「ねえ、石成さん」
「は、はいっ!」
声をかけられた石成さんがびくっと震える。
あいつから偽りの優しさを貰っていたんだろう。
いなくなってちょっと落ち込んでるのかも。
この人には今、支えてあげる人がいなきゃダメだ。
「あなたは、絵のことであいつに相談してたんだよね? あたしでよかったら、いつでも相談に乗るよ。あいつの代わりっていうとアレだけど、話を聞くくらいならできると思うからさ……」
「あ、ありがとうございます。その……相談というか、もしよかったらねむちゃんが一体どんなことをしてきたのか、教えてもらってもいいですか? 気になってしまって……」
「あはは……そりゃそうだよね。あと、あたしのことはチカでいいよ。たぶん同い年でしょ?」
「そ、そっか……じゃあチカって呼ぶね」
「おっけー! あ、あたし石成さんのことかなぽよって呼んでいい?」
「ぽ、ぽよ……? いいけど……」
そうしてあたしとかなぽよは友達になった。
あいつのことはむかつくけど、新しい友達ができたのはよかったな。
*
*
*
「ふぅ……」
あー疲れた。
おばさんになると体力が落ちちゃって嫌だわ。
椅子に括り付けられた由芽ちゃんは、静かに眠っている。
もともとはさっきまで私がねむちゃんって呼んでいたものだ。
最初からこうしていればよかったっていう後悔が、ずっと渦巻いている。
でも、この子が目を開けたら、由芽ちゃんになっているはずで。
それはとっても楽しみ!
久しぶりに由芽ちゃんと逢えるんだもの!
さて、眠っている恋人を起こすなら、どの方法がいいかしら。
キス? それともキス? いや、キスっていう選択肢もあるわ。
私は由芽ちゃんにそっと口づけをした。
すると由芽ちゃんは、ぱちっと目を開けた。
「あら、おはよう由芽ちゃん。きょうもかわいいわね……」
「ねね……おはよう。ねねもすっごくかわいいよ?」
私の名前を呼んでくれた! 呼んでくれた! 呼んでくれたっ!
その事実が嬉しくて嬉しくて、快感が全身を走っていくのを感じる。
「ありがとう由芽ちゃん大好きぃ! ねぇねぇ、きょうは何して遊ぶ?」
「見つめ合いっこしよ!」
「ええ!」
私と由芽ちゃんはじぃーっとおたがいの顔を見つめ合った。
ああ……由芽ちゃんの顔ってなんでこんなにかわいいの……?
見ててぜんぜん飽きないどころか、どんどんかわいくなってる気がする!
時間を忘れるほどうっとりしていると、由芽ちゃんがよろめいた。
あら、もう1日が終わっちゃったみたい。
きっと由芽ちゃん、喉が渇いちゃったのね。
「ごはんにしよっか?」
「うん」
同じ体勢でしびれた体をなんとか起こして、台所に向かう。
「きょうのごはんなにー?」
「愛情たっぷりのシチューよ」
「やった~! ゆめ、ねねのシチュー大好きぃ!」
ぴょんぴょんと全身で喜びを表す由芽ちゃん。
もう……いつまでも子供なんだから。
そこが由芽ちゃんのかわいいところでもあるんだけどね?
トップスをたくし上げて、ブラをずらす。
そして野菜がコトコト煮立っているお鍋に私のお乳を注ぎ込んだ。
このお野菜もお肉も、私のミルクも、これから由芽ちゃんの体の一部になるのよね……。
つまりこのシチューはもう由芽ちゃんって言ってもいいはず。
「由芽ちゃん、この温度できもちいい?」
「きもちいいよ! ねねありがと~!」
お鍋からかわいいお返事が聞こえてきた。
よかった。ちゃんと温度を調整してあげないと、由芽ちゃんあつくてこげちゃうものね?
「ねね~、まだ~?」
「もうちょっとだから待っててね、由芽ちゃん!」
「由芽ちゃん、あとどれくらいにこにこしてほしい?」
「んー、あとちょっとかな」
「わかったわ。焦らなくていいからね!」
ふたりの由芽ちゃんにサンドイッチされて、幸せ♡
できあがった由芽ちゃんをお皿に注いで、由芽ちゃんの前に運んであげる。
「わ~! おいしそ~!」
「ふふっ、それじゃあ手を合わせて~!」
「「いただきまーす!」」
私はシチューをスプーンですくって、由芽ちゃんのお口に運ぶ。
「あーん」
「あむ……おいしい……! きょうはねねのミルクたくさん入ってるね!」
「きょうはちょっと張り切っちゃった! だって……久しぶりに由芽ちゃんと逢えたんだもの……!」
「えへへ~! ゆめも、ねねと逢えてうれしかったよ!」
「も~! 由芽ちゃんったらほんとうにかわいいんだから~!」
私いま、ほんっとうにしあわせ!
由芽ちゃんといっしょにいられる日がまた来るなんて……!
ここまで、本当に長かったわ。
私は、ご飯を食べ終わってすやすやと眠る由芽ちゃんの頭を撫でながら、いままでのことを思い出した――。
だれか、たすけて
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