もう寝取っちゃいまーす!
あれからカナアヤとはときどき3人で遊ぶようになった。
モリカーやったり、カラオケ行ったり。
いっしょにモリカーをやったのが効いたのか、彩乃ともめっちゃ仲良くなれたと思う。
でも、それはあくまで友達として、だ。
ダブルNTRには程遠い。
だから、ここらでこの関係を変えなきゃいけない。
このままじゃ一生そういう目で見られなくなっちゃいそうだから。
じゃあ、どうすんのって話になるわけだけど。
ここはあのぴかぴかのねむの出番だ!
あの美貌なら、ふたりの深い絆だってかんたんにぶっ壊せるはず!
……なんだけど、なかなかメイクって難しい。
「最近メイク始めたんだけどさ……全然うまくできなくて、この前なんか能面みたいになっちゃったんだよ~」
玲奈といっしょにお弁当を食べていると、ついつい愚痴が出てしまった。
「の、能面? どうしたらそんなことになるの……?」
「わかんないよ~!」
首をかしげてる玲奈もかわいいな……。
いっつもかわいいけど。この顔に生まれてたらねむも幸せに生きられてたのかな……。
「あと種類多すぎてどれ使ったらいいかもわかんないし、やり方とか調べてもなんかうまくできないし……。あーもう! メイク勝手にやってくれるロボットとかできたらいいのに~!」
「たしかに、そんなロボットが居たら便利かもね~!」
「そうだよ。もうねむ発明家になっちゃおっかな」
「メイク覚える方が早いんじゃないかな……?」
たしかに。
物理学やら機械工学とかに比べたらメイクの方が簡単かもしれない。
それもできないねむって……。
「はぁ……頑張らなきゃな……」
「……どうして、そんなにメイクしようって思ったの?」
ため息をつくねむに、玲奈が不思議そうに聞いてくる。
この前ママに言ったのと同じ言い訳を使うことにした。
だって一番言えない相手なんだもん……。
すると、玲奈はすこし考えてから言った。
「じゃあ、私がメイク教えてあげよっか?」
「え? いいの?」
そっか……誰かに教わるっていう手もあるのか。
でも、落としたい子にそれを教わるのって……どうなんだろう。
ちゃんとねむは、ねむの力でかわいくなりたい。
……いや、だからって他に誰からメイクを習えるの?
悲しいことにねむは玲奈以外の友達がいない。
カナアヤもめっちゃメイクができるってわけじゃない。
あのふたりは、オーガニック人妻だし。
ここは変なプライドを捨てて、玲奈に頼ろう。
できないよりはましだ。
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「いいよ~! もっとかわいくなったねむちゃんが見てみたいし!」
玲奈がぱあっと聖母みたいに笑う。
またそうやってねむの心をかき乱して……!
なんて悪い女だ。
勘違いして玉砕した女が何人もいるんだろうな。
まあ、そんなわけで。
とりあえずコスメを揃えようと近所のショッピングモールに行くことになった。
あれ……? ふたりでお出かけって……。
これもうデートじゃん!
え、えへへ……玲奈とデート……!
て、手とか繋いじゃおっかな~!
ごめんね彼女さん! もっと後で寝取るつもりだったんだけどもう寝取っちゃいまーす!
「そういえば、この前由芽とモール行ったら、あの子迷子になっちゃって……一生懸命探したなぁ」
「ええ……」
なんで女子高生が迷子になるんだよ。
しかもモールで。
「見つけたら泣きながら私に抱き着いてきて……かわいかったなぁ……」
また惚気かよ!
デート中に他の女の話してんじゃねー!
……やっぱりねむは、恋愛対象として見られてないんだ。
くそう。
モールに着いて、化粧品売り場に向かう。
その途中で、すれ違った女子高生たちがひそひそと。
「あの子じゃない……!?」
「――に伝えなきゃ!」
ターゲットを見つけたスパイみたいな会話をした。
なんか白鳥ボート乗ったときもこんなのあったな。
「あの子たち、なにかあったのかな……」
「さあ……? もしかして、玲奈がかわいすぎて狙われてるとか?」
「そんなわけないでしょ。こんなお……」
玲奈はなにかを言いかけて、口ごもる。
「……モデルさんじゃあるまいし、狙われることなんてないよ」
「いやいや。油断は禁物だよ。いざってなったらねむが守ったげる!」
「ふふっ。ありがと」
玲奈はまた女神の微笑みをねむにくれた。
どんだけねむをキュンキュンさせたら気が済むんだろう。
コスメを選んでいる間も、使い方を教えてもらっている間も。
ねむはずっとドキドキさせられっぱなしだった。
玲奈のおかげで、ぴかぴかのねむにはなれそうだけど。
やっぱりねむには、この子しかいないんだって心に刻み付けられた。
洋服とかもいっしょに見たあと、ねむたちはフードコートに立ち寄った。
歩いてちょっぴり疲れたし、休憩休憩。
玲奈がいちごとバナナのクレープを頼んだから、ねむもそれにした。
もちもちの生地と、いちごとバナナとクリームの甘さがねむを癒す。
玲奈と食べてるからか、いつもよりも甘く感じた。
う……こんな時に。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
ナンパとかされないか心配だけど、漏らすよりはましだ。
急いで戻ってこよう!
*
*
*
「……名取ねむと、仲いいんですか?」
ねむちゃんがトイレに行くのを見送った私に、コギャル系の恰好をした女子高生がそう声をかけてきた。
ちょっと棘のある言い方で、威圧感がある。
どうしたんだろう。
さっきも、嫌な感じがしたし。
「あなたは……ねむちゃんの知り合いですか?」
「……ええ。泊千夏っていいます」
その子は無愛想に名乗って、私に言う。
「あいつの本性、知りませんよね。教えてあげましょうか?」
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