ダブルNTR
お待たせいたしました。
――――――――――――――――――――
「ちょっと待っててねむちゃん。せっかくだし、彼女紹介するね」
「うん」
ばたばたと片付けを終わらせた佳奈は、そう言って彼女のところに行った。
いいタイミングで来てくれたな彼女さん。
気まずい雰囲気をどうしようかめっちゃ考えてたから、助かった。
それに、そろそろ会っておきたかったんだ。
今回のNTRは、ただのNTRじゃない。
ふたり同時に寝取る……ダブルNTRをしてやる!
ねむ、この前チカからいまりんを寝取ったときに思ったんだよね。
ちょっとかわいそうなことしちゃったなって。
この調子で寝取ってたら、いつか本当に刺されちゃう。
だから、あんまり恨みを買わない方法を考えた。
それが、ダブルNTRってわけだ。
どっちも浮気してれば、どっちも同罪だもんね!
そうすればねむに向けられるヘイトは減る。
しかも、ひとつのカップルから二回寝取れるというお得感。
なんで最初からこうしなかったんだってくらい、いいアイディアじゃない?
やっぱり試行回数を踏むのって大切だ。
こういうことを思い付けるからね!
「お待たせ! それじゃあ紹介するね。私の彼女の、
「よろしくね」
「うん。よろしく~! あ、ねむは名取ねむっていうの~! ねむって呼んでね!」
彩乃はダウナーな雰囲気をしてる女の子だった。
首くらいまでの長さのショートヘアで、眠そうな目つき。
顔はちょっと童顔で、庇護欲を掻き立てられる人妻だった。
いいね。寝取りがいがありそう。
「佳奈から聞いた通り元気だねぇ~ねむちゃん。まあ一応あいさつってことで。ぼくのことはおかまいなく~」
彩乃はヤドカリのように引っ込もうとする。
友達に譲ってくれるなんていい人妻……!
でもそうはさせるか!
こっちはお前も狙ってんだよ!
「ちょっと待って! よかったら、彩乃ちゃんもいっしょに遊ばない?」
「いいの~? お邪魔しちゃって」
「いやお邪魔してるのはねむだし。ねむ、彩乃ちゃんとも仲良くなりたいんだよね……だめ?」
ねむが上目遣いをすると、佳奈が彩乃に言う。
「ねむちゃんもこう言ってるし、彩乃も遊ぼ!」
さっきの気まずさを解消したいっていう気持ちもあるんだろう。
ねむも半分くらいはそうだし。
「うん。じゃあ遊ぶ~」
ゆるーく3人で遊ぶことが決まって、彩乃が家からネトッチ2を持ってきてくれた。
「すごっ! 買えたんだ!?」
「うん。多言語版応募してたから」
運いいなこいつ。
ゲームあんまやらないねむでもクソ品薄だって聞いてたのに。
「それじゃあモリカーやろ~。ねむちゃん、やったことある?」
「実はないんだよね~。やり方、教えてもらってもいい……?」
「いいよ~」
彩乃がネトッチ2を起動させて、モリカーを立ち上げる。
NTRとか関係なしにちょっとワクワクしてきた。
こんなところで最新ゲーム遊べるなんてラッキー!
彩乃がすいすいと設定的なものを選んでいく。
初心者でも走れるのにしてくれているみたいだ。
画面がキャラと機体を選ぶところに切り替わる。
「どれがいいとかある?」
「最初は……てきとーに選んじゃっていいよ」
「わかった! じゃあこのカニにする!」
このカニかわいいな。
見覚えのあるキャラもいるけど、この子にしよう。
「あ、加速いっぱいできるのにしておくと走りやすいよ。彩乃はうまくて参考にならないから……」
「そっか……ありがと」
「え~そんなことないのに~」
佳奈からもらったアドバイス通り加速をもりもりにして、コースがルーレットで選ばれる。
待ってる間になんか走れるっぽい。
これで待ち時間潰せるってことか……すごい。
ふたりに走り方を教えてもらって、壁にゴンゴンぶつかりながらも待機中のコースを走る。
なんか曲がるの難しくない? 初心者ってこんなもん?
グラフィックすごいな……海とかもう本物みたい……。
しばらく景色に感動しているとコースが決まって、レースが始まった。
なんかみんな加速してるな。
ねむもしておこう。
「あっ、ねむちゃんそれは……」
ふぉーんとスタートした瞬間、なぜかねむの機体が爆発した。
カニがくるくると目を回す。
「な、なんで!?」
「あれずっと押し続けてるとそうなっちゃうんだよねぇ。でもまだ始まったばっかりだからだいじょうぶだよ~」
彩乃がゆったりと1位を走りながらそんなことを言ってくる。
このやろう。ぜってぇ追い抜かしてやる!
よし、アイテムボックス取れた!
アイテムのルーレットが回って……出たのはなんか金色のキノコ!
これすごいやつなんじゃない!?
使っちゃおう!
キノコを使うたびに、ぶおんぶおんと機体が加速してスピードを上げていく。
すごいすごい! これなら遅れを取り戻せ――。
「ぎゃーっ!?」
加速しすぎて、コースの外に落っこちてしまった。
「それは使うタイミング考えないとそうなっちゃうんだよね……」
「ま、まだ1ラップ目だからだいじょうぶだよ!」
「う、うん! そうだよね!」
なんで自分で使ったアイテムに殺されないといけないんだ。
最下位になっちゃったけど、ここは気を取り直して走り出す。
次のアイテムは……ロケット?
とりあえず使ってみると、なんかカニがロケットに変身してどんどん追い上げていく。
他のキャラも跳ね飛ばしながら。
「すごい! このアイテム最強じゃん!」
「ねむちゃん運いいね~。これは負けてられないなぁ」
とか言いつつ彩乃はいまだに1位をキープしていた。
どういうドラテクしてんだこいつ。
「ひゃあっ!? なんか変なの飛んできたんだけど!?」
「それ食らったらちょっと動けなくなっちゃうんだよ。気をつけてね!」
ライバルに物ぶつけるなんて……こいつらスポーツマンシップとかないの!?
くそっ! こうなったらねむもおかえしだ!
さっき食らったのと同じアイテムを引き当てたから投げてみる。
あれ? 当たらないんだけど?
と思った次の瞬間、投げたのがねむに跳ね返ってきた。
「ウソでしょ!?」
「それ壁で跳ね返るやつだから……」
「うう……それ先に教えてよぉ!」
そんなことがありつつも、さっきの金色のキノコをうまく使えたり他のアイテムで追い抜かせたりして、意外とねむの順位は上がってきた。
彩乃は1、2位をキープしてて、佳奈もそれに続いている。
ふたりはやっぱり上手い。でも、そんなふたりも見えるようになってきた。
「ねむちゃん上手いね! コツ掴んだら伸びるタイプだ~!」
「わーい! 褒めてくれてありがと~!」
そう言ってねむは佳奈にアイテムを投げつけた。
お姫様がくるくると目を回す。
「こんの~! やったなねむちゃん……!」
「初心者にアイテムぶつけられてやんの! やーい!」
煽ったら佳奈はすぐにアイテムを投げつけてきやがった。
またカニが目を回す。
「なにすんの!? ねむ初心者なんですけど!?」
「さっきのおかえしだよ~!」
「えーん! 佳奈がねむをいじめてくるよぉ~!」
「自業自得だと思うな~」
醜い争いをしている間も、相変わらず1位をキープする彩乃。
上手すぎでしょこいつ。
そうして走り続けていると、ゴールが近付いてきた。
今、さっきの金色のキノコを引けていい感じの順位にいる。
よし、ここで彩乃に追い付くぞ~!
次の瞬間、雷が落ちてぜんぶがぶっ飛んだ。
「は、はあ~!? なに今の!? 金キノコがぁ……」
「あれはみんな食らっちゃうからねぇ」
「そんな~!」
雷でぜんぶが狂っちゃって、ねむは8位だった。
彩乃は1位で、佳奈は3位。
くそう……雷さえなかったら……。
「つ、つぎは1位取るかんね!」
「そっか~! 頑張れねむちゃん! ぼくに勝てるかな~?」
「み、見てろよ~!」
「ふふふっ……ねむちゃん、面白いね~」
「でしょ~?」
その後もねむは頑張ったけど、一回も彩乃には勝てなかった。
佳奈にはときどき勝てた。ざーこ。
――――――――――――――――――――
多忙につき、本日から7月22日まで「ぜってえ寝取ってやる!」の更新をお休みさせていただきます。
たびたびお待たせして申し訳ございませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
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