これでずーっと一緒にいられるね♡
ねむっちにアドバイスしてもらったあと、あたしはさっそくいまりんと話をすることにした。
急に言っておいていまりんの家で話すことになったのは、ちょっと申し訳ない。
でも伝えるタイミングをずっと待ってたら、言えなくなっちゃいそうだから。
あたしは、ちゃんと気持ちを伝えるんだ……!
「話したいことって、なに? もしかして……プロポーズ?」
「いやいや、まだ早すぎるでしょ!」
いまりんが手をほっぺに添えて顔を赤くする。
これから伝えようとしてることを考えると、だいぶ罪悪感が湧いてくる。
……いや、負けちゃ駄目だ。
心を鬼にしないと。
「あっ……ごめん! こういうのってわたしから言ったら駄目だよね……うう……せっかくチカが勇気を出してくれようとしてたのに……わたしのせいだ」
「だからプロポーズじゃないって! 大事な話なの」
「え? ……そっか。そうだよね。チカがわたしにプロポーズしてくれるわけないもんね。どうせわたしなんて……チカには釣り合ってないんだもん」
「もう、そんなことないってば。あたしは、いまりんのいいところいっぱい知ってるよ?」
「じゃあさ、なんでさっきこいつにわたしの相談とかしたの?」
「え?」
いまりんはあたしと話しているねむっちの写真を見せてくる。
「な、なんで知ってるの!?」
「わたしが知らないチカなんていちゃダメなの」
まさか……ずっと見られてて……相談したことも聞かれてた?
位置情報共有してるから場所はわかったんだろうけど、そこまでするなんて。
でも、いまりんのこと色々とねむっちに話しちゃったのはよくなかったな。
「ごめん……あたし……」
「いいのいいの。わたしが、こんなんだから浮気しちゃったんでしょ? だから、わたし、もっとチカに好きって言ってもらえるようにがんばることにしたの」
「え?」
何を言ってるんだろう。
話を聞いてたんだったら浮気じゃないってわかるはずなのに。
戸惑っているあたしを置いてけぼりにして、いまりんはどこからかアイマスクを取り出した。
「これ付けて」
「な、なんで……?」
「いいから」
いや怖い怖い怖い。
あたし今から何されるの?
ぐいっといまりんに押さえ付けられ、アイマスクを付けられる。
意外と力が強い……!
なにも見えなくなった後、あたしの両腕がひものようななにかで縛り付けられた。
まさか……。
「ストックホルム症候群って知ってる? 監禁された人が監禁してきた人と一緒にいるうちに好きになっちゃうって病気なんだけど、それならわたしでもチカに好きになってもらえるよね!」
「ちょっといまりん!? やめてよ! あたしはそんなことしなくたって……」
「素敵な病気だよね。どんな人でも好きな人と両想いになれるんだから……」
全然話が通じない。
……最初から無理だったんだ、きっと。
あたしの気持ちを、わかってもらうなんて。
「これでずーっと一緒にいられるね♡」
いまりんはあたしの体をぎゅっと抱きしめて、耳元で囁き続ける。
「だいすきだいすきだいすきだいすきだいすきだいすき! わたしね、チカがやっと側にいてくれるようになってほんとに嬉しい! わたしいっつも嫌だったんだよ? チカってばみんなに優しいから、みんなと一緒にいてあげようとするんだもん。わたしだけのチカにはなってくれなかった……でも、もうそれもおしまい。今のチカにはわたししかいないの! そんなのイヤだよね。わたしだってそう思うよ。でも安心して? わたし、もっと頑張るから。ね? チカもわたしがいないと生きていけないようにするからさ――」
*
*
*
あれから会ってたのバレてたってチカに即ネトスタ送ったんだけど、既読になんない。
まさか監禁されちゃったとか。
いやーそんなわけないよね。さっき逃げてきたばっかだし。
……べ、別に心配してるとかじゃないけど、一応通話してみる。
繋がらない。
ほんとに監禁されちゃった?
いまりんのあの感じだとやりかねないし。
……ここは大人しく手を引いた方がいいのかな。
正直、いまりんを甘く見過ぎてたかもしれない。
あいつ、話通じねーし。
でもせっかく見つけた人妻を見逃がすなんてもったいなさすぎる。
どーしよ。
ベッドの上でゴロゴロしながら迷っていると、チカから通話が来た。
ねむは秒で通話に出る。
切羽詰まってる状況かもしれないし。
「もしもし? ネトスタ見た?」
『うん……実はさっき、いまりんに監禁されそうになってさ……』
「は? やば!? 大丈夫!?」
まさかとは思ったけど、ほんとに監禁してくるなんて……。
『うん大丈夫。今逃げてきたとこ』
「逃げてきたとこって……よく逃げられたね」
あいつのことだからスタンガンくらい平気で使ってきそうなのに。
『いや実は両手を縛られてたんだけど、なんかゆるくてあっさり抜け出せちゃったの』
「ええ……」
チョロすぎんだろ。監禁ってなんだっけ。
『それであたしの話ぜんぜん聞いてくれないんならもう別れるって言って逃げてきちゃった』
「そ、そっか……逃げれてよかったじゃん」
『うん!』
通話越しでも憑き物が落ちた雰囲気を感じる。
やっぱり重荷になってたんだな。
「もう吹っ切れた感じ?」
『まあ、ちょっと罪悪感はあるけど……あんなことしてくる子ならもういいかなって』
「よかった。やっと正気に戻ってくれたね」
『ほんとに目が覚めたよ。ねむっち、ありがと』
「いやいや……チカが頑張ったからだって」
『そうかな……じゃあ、今度またいっしょに猫カフェいこーよ! 頑張ったごほーび、欲しいっていうか……』
「いいじゃん! 行こ行こ~!」
そうして、いつもよりテンションの高いチカとぺちゃくちゃ喋ったあと、ねむは重要なことに気付いた。
あいつ……!
今人妻じゃねーじゃん!?
やばいやばいやばい!
いまりんは確かにヤバかったけど、だからって別れさせちゃったら……、誰からチカを寝取ればいいの!?
うわああああああああああああああああん!
貴重な人妻がああああああああああああああああああああ!
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