1. 新たな人生

柔らかい日差しに当てられて、俺―桐谷きりや世斗せいとは目を覚ました。

同時に、見たことのない天井が目に入る。


どうやら、どこかのベッドに寝かされていたようだ。

丁寧に布団までかけてある。


「うっ…」


体を起こすと共に、軽い頭痛が走った。


「どこだ、ここは……?」


横にある窓からは朝日が差し込んでいて、外には西洋風の町並みが広がっている。

おかしい。ついさっきまで、会社で働いていたはずなのに。


反対側へ首を向けると、至って普通の、簡素な部屋がある。

木製のテーブル、何も置かれていない棚、一人用のソファで寝ている白黒のうさぎ…


「あ…」


(うさぎ……?この家の人が飼っているのか?)


しかし、それにしてはケージやエサなどが見当たらない。


ベッドを降り、うさぎに近づくと僅かに上下しているのが分かった。

お腹の黒い模様だと思っていたものは、どうやら服だったようだ。


さらに覗き込もうとした瞬間うさぎは目を覚まし、ゆっくりとこちらを見た。


「んん……あ、おはよー…」

「うわっ!?」


(しゃべった!?)


うさぎは目をこすりながら、器用に後ろ足で立ち上がる。


「起きたんだね。しばらく寝てたから大丈夫かと思ってたけど」


そう言うと腕を組んで、うんうんと頷いた。


うさぎには似つかわしくない仕草に、俺は口をぽかんと開けて立ち尽くす。


「な、なんでうさぎが……」

「しゃべってるかって?細かいことは気にしないの」


そこで区切りをつけると、うさぎは手をパンと叩いた。


「とにかく!異世界へようこそ!」

「なんだって……?」


(異世界だと?)


しかし、それならこの状況にも納得がいく。

急な話ではあるが、今はそう思うしかない。


(いや、待てよ?つまり…)


「俺、死んだ?」

「うん、トラックにはねられて」

「ベタだなあ」


俺の質問に、うさぎは迷わず首を縦に振る。

どこかで聞いたことのある死因に、ただ呆れることしかできなかった。


「でも親切なボクのおかげで、復活したんだからね。感謝しろー」


そう言って胸をそらすと、赤い蝶ネクタイが強調される。

どうやら、服は黒のタキシードだったようで、左胸にはにんじんのバッジがついている。


(定番の最初に現れる女神枠、ってとこか。どうせなら、女神が良かったな…)


「む、何か失礼なこと考えてるでしょ」

「い、いや…あはは……」

「…………」


失礼なことを考えていたら、うさぎにジト目で見られてしまった。

白目がないので、こちらを見ているかは分からないだが、何故だかそう感じた。


(話題を変えなきゃ…そうだ!)


「定番といえばもう一つ、チート能力とかないの?」

「お!よく聞いてくれたね!」


うさぎの耳が立ち、嬉々とした表情に変わる。


「なんと…この世界にはスキルという概念がありません!」

「いや、なんで溜めたんだよ!」


俺の反応を受けて、うさぎがくすくすと笑う。

どうやら、からかわれていたようだ。


(なんだよ……。期待してたのに)


「しょうがないじゃん、いちいち命名ネームドするのが面倒くさいんだから!この世界に人類及びそれに近い種族の個体が何体いると思ってんの!?たかが名前を考えるだけで、一体どれだけの時間が消費されるか!!」

「わ、わかったから…一旦、落ち着いてくれ」

「ふん!」


突如として、うさぎが暴れ出したのでなんとか制止する。

とは言ってもただのうさぎなので、捕まえて持ち上げるだけで済んだのだが。

どうやら、神にも色々と気苦労があるようだ。


「神ね…。ちょっと違うんだけどなあ……まあ、いっか」

「……ん?」

「神に隠し事は通用しないからねっ!」


何故か、笑顔で返された。


(心でも読まれた……?)


であれば、先の失礼云々に関しても、完全に理解した上での反応だったことになる。


「ふふふ」

「……」


…きっと、神様は寛容な心で許してくれるだろう、たぶん。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


その後、うさぎに色々なことを聞いた。

いわく、うさぎ―名をリブレという―はこの異世界の創造主であり、俺をこちらに連れてきた張本人だそうだ。


「魔力のある世界に適応できるように、体を再構築したからね。最初に眠ってたのは、その反動がきたからだと思うよ」


とのこと。

ちなみに、具体的にどう変えたのかを聞いたら、想像以上に生々しい話だったので、聞かなかったことにした。


それから、スキルのようなものはないが、いわゆる魔法は存在すること。

そして、この会話もうさぎが常時展開している【翻訳】によって成り立っていること。


「ボクがキミに常に魔法バフをかけてるわけ。効果はボクから半径10mくらいね」

「離れると、どうなんの?」

「日常会話はおろか、読み書きすらできなくなるよ」


どうにも、【翻訳】は対象者に直接作用するらしく、聴覚や視覚など知覚したもの全てを、らしい。


「ボクが『魔導馬車』って言ったら、キミが知らないものだったとしても、機能とかが似てる『自動車』って聞こえるわけ」

「おおー」


実際は、魔導馬車と言ったところだけ【翻訳】を解除したので、よく分からない単語が聞こえただけなのだが。

それでも、大体の仕組みは理解することができた。


そして、一番気になっていた魔法の使用の可能性である。


「で、実際のところ、俺って魔法使えんの?」

「まだ分からないね。冒険者ギルドに行ったら、初回登録のときに測定してくれるよ。戸籍代わりにもなるし、作りに行こっか」

「おう」


こうして、俺は新しい人生の第一歩を踏み出した。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



あとがき

とある方に触発されて、異世界系のお話を書いてみました。

自分で書いたことを忘れて、後半で設定がガバガバになったりすると思いますが、ご容赦ください。

作者はいつまでも初心者マークを掲げながら、執筆を続けたいと思います。


それから、作者の方に色々ありまして完成してから出すつもりだったのですが、0話と1話だけ出すことにしました。

続きに関しては、かなり遅くなると思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に転生したので、この世界の神と一緒に箱庭作ります 風谷香楽 @Manta_16

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ