第33話 13話(2)

「う、嘘でしょ!?」

「ただの血が、は、刃物に?」

サラディアとリデルはお互いに嘘だろとにわかに信じられない表情を浮かべながら、正直な気持ちを吐露した。

お互いに驚いてはいたもののサラディアの方はシスターが似たような技を使っていたことを見ていたからなのか初見のような驚きではなく、一方でリデルの方は完全初見の反応をしていた。

俺はもう何度も見てきたからこそ言える。

間違いない。ベルクラウスは『吸血族』の力を使っている。

「驚いただろ? これが、神様がくれた『吸血族』の力だ! この力さえあれば俺はこの国を掌握できる。ほんと、偶然だったとはいえ陰湿な嫌がらせに途方に暮れていた俺に救いの手を差し伸べてくれたあの謎のフードを被った赤い髪の女には感謝せねばならないな」

「謎の赤い髪の女?」

「おや? お前たちは知らないのか。まぁ俺も名前や素性等も含めて詳しく聞いたわけじゃないが、結果的に俺に力を恵んでくれた神だよ!」

ベルクラウスが言う赤い髪の女がどんな人間なのかはわからないが、おそらくは『吸血族』の力を持った人間と見て間違いないことは確かだ。

それが、シスターの探している『吸血族』なのかまではわからないが。

「この力のおかげで、俺は次期国王が内定していたバティス王を脅して傀儡政権として利用することに成功しただけでなく、俺が密かに用意していた暗殺部隊を国内部に引き込むことも成功した。そこから後は流れ作業さ。殺し屋たちに命令して王族関係者と装って遅効性の毒を先代国王に盛ることで、表向きは病死という形式で殺害。その後を継いだバティス王が即位したところで同時にナンバー2に昇格した俺が傀儡政権であることに変わりはない。バティス王直属の特命という形で俺は堂々と裏でテロリストを使って反対勢力の粛清に全力を尽くすことが出来た。お前の両親はその中の一人だっただけに過ぎない。そしてその積み上げた結果が今だ」

ご丁寧にベルクラウス本人の口から全て全て真実を話してくれた。

正直なことを言えば、ベルクラウス本人がうまくやったというよりも『吸血族』の力を授けてくれたその謎の赤い髪の女のおかげによるものが大半なのではないかと思っているが、それでもこうして国のナンバー2に登り詰めたことだけのことはある。

「ということは、その女性から自分の手足に使っているテロリストを使って『吸血族』の力を持つ人間と言われたのですか?」

「そうだ。俺が力を授かった直後くらいに向こうから目的のついででいいから『吸血族』の力を持つ人間は始末しろってな。無論、俺はこの国を支配するのに手を回していたからやり方は全部あいつらに任せていたが」

そういうことか。

ヴァンロード聖教会を襲撃した実行犯はあのテロリストたちで、それを指示したのはベルクラウスなのは間違いなかった。だが、それはあくまで幻想の一部だったにすぎず、シスターを殺したがっているのはベルクラウスではなく、ベルクラウスに『吸血族』の力を与えた謎の赤い髪の女性であることがこれで確定的となった。

先の心配をしても無駄だと言われるかもしれないが、これはベルクラウスを倒しただけで終わりというそんな単純な問題じゃないことだけははっきりと言える。

「さてと。少し長話が過ぎたようだ。これ以上、俺の姿を赤の他人に見られでもしたら俺の計画が台無しだ」

ベルクラウスゆっくりとした足取りで階段を下りていく。

そして、俺たちの真正面になったところで足取りを止めると、手に入れた吸血族の力を利用し、赤い血でできた剣を取り出した。

「さぁ、貴様らも俺の血肉となるがいい!」

こうして、ついにベルクラウスとの戦いが始まったのである。

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