第31話 12話(3)

扉を開けた直後、そこにはベルクラウスの姿……はなく、もぬけの殻である。

「流石にあの爆発騒ぎがあったでもなお、ここでのんびりしている様子はない、か」

サラディアはしばらく一通り全体を見渡していると、ふととある疑問が浮かんできた。

「ねぇ2人とも。なんか変じゃない?」

「変って、特に何か違和感だと思うところはないように見えるけど」

「いや、いくらなんでも城内が静かすぎる。ましてや、さっきあんな爆発があった直後。普通ならもっと兵士たちがあたふたしていてもおかしくないのに、まるで廃墟になった学校のような静寂。いくらなんでもこれはおかしすぎる」

確かに、城内に入ってすぐ、ベルクラウスはおろか、外にいるはずであろう兵士の声も足音も聞こえてこない。仮にあの爆発の犯人を捕まえるために城外に兵士を向かわせているにしても、多少でも兵士を城内に残しておくはず。

もっと言えば、ベルクラウス本人が部屋にいなくても、それを相手に気付かせないためにダミーで扉の前に兵士を置いておいてもいいはずなのにその兵士の声すら聞こえない。

「おいおい。まさか、ベルクラウスの野郎はそもそもこの城にはいないって言うのか?」

「いや、それは流石にあり得ない。もし城外に出かけるのであれば事前に何らかの形で国民に知らせをしているはず。とりあえず、リスクは承知だけど事の真相は城内の中央に位置している式典などを使う際に使う王の間に行こう」

兵士たちと戦うこともやむなしと思っていたが、これは流石に予想外だったが、ベルクラウス本人がこの部屋にいない以上、いる可能性の高い王の間へと足を進めていく。

扉を開くとそこには本来であればいるはずの兵士たちの姿はなく、確実に致死量は超えているであろう出血の後のみ。

間違いなく、あの爆発以外にも何かあったと確信づかせるには充分だった。

「ここだけじゃない。血の跡がこの先にも続いている。何が起こったのかはわからないけど、何となくベルクラウス本人が関与していると見て間違いなさそうね」

「一刻も早く何とかしないと、また関係ない人間にまで被害が及びそうだし、とにかく急ぐぞ」

俺もリデルもサラディアももはや、もし仮に兵士の生き残りがいたとしても真正面から戦うことも致し方なしの心境に変わっていた。

しかし、実際はそんな覚悟を逆手に取るかのように進んだ先に兵士の姿が誰一人として見かけず、あるのは何かがあったと思わせる血だまりの数々のみ。

その血だまりもかなりの量であり、ずっと見続けていると軽く夢で出てきそうになるほど。

だが、結果論とはいえ、城内に生きている兵士が一人もいないという状況は結果的に俺たちを決戦地へと足を運ばせることにおいては追い風となっていた。

そして、俺たちは一度も城内で戦闘を行うことなく王の間へとたどり着いた。

王の間へと到着した直後、そこで目に飛び込んできた光景に俺たちは唾を呑みこむことさえ躊躇してしまうほどの戦慄な光景が飛び込んできた。

「ほぅ。やはり来たか」

そこにはそこら中にどこにもいなかったはずの兵士たちがおびただしい量の血を流して倒れており、さらに先に視線を向ければ、両手に赤い血を浴びた状態で突っ立っているベルクラウス。

そして、その近くで座って人形のように動かなくなっていたのはベラルティア王国の国王であるバティス王だった。

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