第23話 8話(2)
シスターとサラディアとの間に流れる無言の見つめ合いが部屋一帯の空気をより一層重くさせていく。
俺もリデルもとても二人に何か声をかけられる雰囲気じゃないことだけは素肌を通じてビクビクと感じ取れる。
そんな気軽に会話のできない雰囲気を打破したのは、意外にもサラディアであった。
「あなた達、一体何なの? そこのバカ強シスターといい、ここにいる全員この国の人間じゃないのだろ?」
「そうですね。この国との直接的な接点はあなたが言う通り、ないです。しかし、私の目的が何なのかは大方あなたに指示をした人間から聞いているはずでしょう?」
シスターがサラディアに対するこのいい口はある程度、サラディア自身がテロ組織の人間として上の人間から指示を受けているという仮説があっている前提で話しを進めている。
まぁシスターのことを噓つきの詐欺師と思っているわけではないが、この状況でわざわざ俺たちに嘘をついている状態で事を進めることはないはず。
実際、サラディア側がシスターからテロリスト関係者であるという断言に近い指摘にも特に否定や反論をする素振りもないところから本当のことなのだろうと俺は考えている。
「あたしはあくまで依頼してきた王族の関係者から、視察の邪魔をしに来た連中を国民にバレないように始末しろと言われたから実行しただけ」
やはりサラディアたちが俺達を殺したい人間から指示を受けたので間違いないようだ。
問題はその王族関係者というのが誰であるかということなのだが、視察の邪魔と言っていることは当日視察に来ていた3人の王族関係者ベラルティア王国の国王である「バティス王」、そのナンバー2である「ベルクラウス」、そしてベルラティア王国の令嬢であるホムラのいずれかということになる。
シスターもそこら辺はある程度察しがついているようで、その人物が誰かを探るために瞬時に生成した赤い血の剣をほぼ脅しに近い形でサラディアの首に寸止めの状態で問いかける。
「その殺害を指示した王族って誰? 質問に答えなければ、ここでお前の首を刎ね飛ばす」
静かな口調でありながらもはっきりと相手の精神に揺さぶりという名の脅しを加える。
シスターの言い訳や逃げ口をするのを一切許さない姿勢はいい意味で見た目にそぐわない。
そんなシスターの脅しに対し、サラディアは最初こそ無言を貫いていたがしびれを切らしたのか、シスターの持つ剣がほんの数センチ動かそうとするよりも先にサラディアの方が重い口を開いた。
「ベルクラウスだよ。ベラルティア王国のナンバー2の」
その瞬間、俺とリデルの目が思わず目を見開いてしまうほど驚いたのに対してシスターはジッと何かを裏を探るような目でサラディアの表情を確認する。
その後、サラディアの発言が嘘ではない事を察知したシスターはそれでもなお剣を喉元からほとんど動かさない状態で口を動かす。
「そのまま続けてください」
短い言葉かつ普段のシスターと変わらない言い口でありながらも、嘘の一つでもつけば命はないと言わんばかりに恐怖心は十分に植え付けていた。
それを十二分に察していたサラディアも特に嫌がる様子もなく、淡々とした様子で続けて話を進める。
「この国がバティス王を頂点として成り立っているのが表向きの印象だけど、実際は全く違う。バティス王はベラルティア王国外からやってきたベルクラウスによって作り出された傀儡政権なの。ベルクラウスがやってくるまではあたしたちが所属している組織なんかもない、表向きの評価の通り、戦争もしない武器も持たない超がつくほどの平和主義的国家だった。だけど、それがとある国から視察兼見習いの派遣としてやってきたベルクラウスによって、あっという間に王国内の政治争いを制してナンバー2にまで登り詰めて、それまでの表も裏もない真の平和主義国家だけなのが、表向きは平和主義、裏では本来は禁止されているはずの軍を使った暗殺や粛清を行う独裁主義というあまりにも相反する二面性を持つ国に変貌した」
なぜ、平和主義を掲げている国が俺達を躊躇なくテロリストたちを裏で操っているのかが理解できなかったがこれで納得がいった。
サラディアの話を要約すれば、元々は平和だった国に外部から派遣されてやってきたベルクラウスによって王国内部を掌握され、ナンバー2にまで登り詰めたベルクラウスの指示の元で、平和主義から表向きは平和主義、実態は独裁主義へと方針転換したということになる。
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