第20話 7話(1)

「とりあえず、今日はもう夜も遅いですし、ゆっくり休みましょう。今後どう動くかはその後に決めればいいので」

一通りの情報を共有し合ったので、今日のところはシスターの言う通りに眠りにつくことにした。

しかし、ここで問題が起きる。

「寝るって言っても、ベッドは元々二人分のスペースしかないんですけど。誰か一人はあまりってことになりますけど」

そう。この部屋は元々、秘密の部屋として扱われているので、ベッドが最大2人までしか寝れる広さがないのである。強引に3人で寝るという選択肢もあったが、正直、間近でシスターが寝られると変な緊張で素直に寝付けない気がしない。

俺の率直な問いかけに対し、シスターは若干呆れ笑いも含んだ意外な回答を言い出す。

「それなら大丈夫ですよ。私は立って寝ますので。ベッドはローデンとリデルの2人で使ってくれて結構です」

「え? でもシスター。いいんですか? 立ったままだと余計に寝づらいんじゃ……」

「心配は無用です。こう見えても割とどこでも寝られる体質ですからね。それに、狭いベッドに3人寝るとローデンたちが余計に寝づらそうですし」

相変わらずシスターは恐ろしいほど勘が鋭い。鋭すぎて、シスターの前では自分の考えが完全に筒抜け状態で接する必要があるという無駄な努力を体が覚えてしまうほどである。

それでも、このまま平行線のまま進んで睡眠が削られるのも良くないと考え、シスターの意見にリデルも納得していたことを含め、結局は俺とリデルがベッドで寝ることになった。


そして、全員が眠りについてしばらくの時が経つ。

部屋の扉の前で目を瞑って寝ていたシスターを欺こうとするように静かな音でガチャと鍵の開いた音が鳴り響く。中に入ってきたのは黒いフードを被った紫色の髪をした謎の女の子。右手には毒を盛ったナイフを携えており、慣れた足つきでローデンたちが寝ているベッドの方に足音一つ立てずに近づいていく。そして、リデルが寝ている目の前にまで到着すると、毒を盛っておいたナイフをリデルの首元に向かって振りかざした。

しかし、その斬撃を引き起こす刃は寝ていたはずのシスターによって止められた。

シスターはナイフが突き刺さるよりも先にナイフの持つ腕の動きを右手だけで封じ込める。

想定外の妨害に動揺を隠せない女の子に向かってシスターは悪魔のささやきのように耳元で語りかける。

「来ると思ってましたよ。テロリストの一味さん」

その短い言葉は、女の子の殺意を焼失させるにはあまりにも充分であった。


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