第13話 5話(2)
「これで良しと。ごめんなさいね、ローデン。ここら辺は少し気を遣わないといけなくて」
「そ、そうなんですか? 特に見たところは問題なさそうに見えますけど」
「言ったでしょ? この部屋は普通の人間じゃ入れないって。だから入るときも出来る限り部屋に入ったことをバレないようにしないといけないんです。まぁ入ってさえしまえば、この部屋は防音でできているので大丈夫なんですけどね」
わざわざ防音のある部屋を選んだのもこれからする話が間違いなく人に聞かれたくない話だからなのだろうか。
「それで、どうやってこの国の情報を仕入れていたんですか?」
本題はここから。
普段から聖教会用に食材などを購入するためにベルラティア王国にやってきていたとはいえ、ほとんど一般人に近いシスターがどうやって王族関連の情報を獲得できたのか。
王族の中で何か伝手があったのだろうか。
「それはまもなくわかりますよ」
そう言いながらいきなり部屋の窓を開ける。
そんなことしたら、部屋が防音である意味がないんじゃないかと言おうとするよりも先に小鳥みたいな生き物が部屋の中に入ってきた。
何かが侵入してきたのを確認したシスターは手早く窓を閉め、鍵をかける。
「あ、あの。さっきこの中に何か入ってきたのって」
「ご紹介します。私の情報収集に貢献してくれている内のペット、イフォバット」
窓の外から入ってきた生き物の正体はコウモリ。
まさかコウモリを使ってベルラティア王国に関する情報を得ていたのか。しかし、こう言ってはあれなのかもしれないが、ただの小動物であるコウモリがどうやって情報、それも王族関係者の情報を抜き取れるのか。
そんなことを考えていると聞いたこともない声が俺の耳へと走る。
「おい! 貴様、この俺様がたかがコウモリ如きがどうやって情報を盗むなんて思っていないだろうな!」
その声は人間にしては妙に甲高く、そして何より自分がコウモリであると名乗っている。
まさかと思いながらコウモリの方へと視線を移すと、そのまさかだった。
話声の正体はコウモリだったのである。
「え。えぇぇぇぇ!? こ、コウモリがしゃべったぁ!?」
「貴様まだそんなことで驚いているのか。吸血族の世界では小動物が人語を話すのは当たり前の常識だぞ!」
恐らく性別で言えば男なのだろうがこのコウモリ、いや、イフォバットの話す声が想像以上に高くて、思わず二度見三度見するほどである。
それでも、実際にシスターが情報収集を行うために利用していたのだからかなり有能なコウモリであることは確かなのだろう。
「まぁまぁイフォバット。ローデンはそもそも外の世界を知らなかったのですから、情報収集のためにずっと飛び回っているあなたを知らなくても当然のことだと思いますよ」
「外の世界を知らない? じゃああれか。こいつがこの前、俺様がヴァンティア様に情報を共有した時にヴァンティア様の言っていた混血適合者ってこいつのことですか!?」
「そうですよ。これから先、お世話になるのですから礼儀はわきまえてくださいね」
イフォバットは俺の顔を見て『こいつが?』と言わんばかりのムカつく顔で見つめてくる。
まぁ今までずっとシスターの情報収集に貢献してきたのだから、ある意味見下されても仕方のないことではある。
「まぁいい。それで? わざわざこのタイミングで俺様を呼びつけたってことは今回の作戦とかもこいつに教えるってことか?」
イフォバットの問いかけにシスターはフフッと笑みを浮かべ、ベットの上に腰かける。
そして、一瞬の間があった後、シスターはわずかばかりに目を濁らせた状態で語りだすのである。
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