第42話

「和泉くん、今日もお願いねー」


「はい、よろしくお願いします」



和泉くんは、指定された服を着るため、フィッティングルームへと向かう。


表紙で着る洋服は、メーカーさんや編集者さんで話し合ったり、たまに企画としてモデル本人が選んだりする。企画の表紙撮影となると、服は自前のものも含まれることがほとんどだ。




和泉くんの姿が見えなくなったところで、カメラマンさんとなにやら楽しげに談笑している印南くんに目を向けた。



黒のカットソーに紺のチノパンを合わせた印南くんは、時に無邪気な笑みを見せて、時に息を呑むほど大人っぽい微笑みを見せる。紙面で見た通り、本当にかっこいい。




容姿のいい人を見慣れている編集部の人たちもかっこいいよねー、と紙面を眺めていることが多い。和泉くんの時もそうなのだが、まさか二人目が現れるとは思わなかった。



モデルなりたての頃の印南くんは和泉くんをお手本にしているのがわかりやすかったが、最近は自分らしさを表情やポージングに出すようになってきて、それが輝いている。こうすれば自分が映える、というポイントを抑えるのが上手くなった。



和泉くんも、それが得意だった。多分、印南くんはそれに気付いたのだと思う。和泉くんにも、「amber」に憧れのモデルがいた。その人は今、20代の男性向けファッション雑誌で活躍している。その雑誌を、和泉くんは毎月欠かさず発売日に買っている。





「撮影はじめまーす」



今日は、和泉くんの表紙撮影のあとに印南くんの撮影というスケジュール。


印南くんの撮影は人気ブランドの撮影ということで、緊張しているとスタッフさんに聞いたけれど、全くそれを感じない。

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