第40話
「俺、和泉さんが憧れなんです」
爽やかな笑みで印南くんが当たり障りない言葉を言う。
和泉くんは「ありがとう」と王子様みたいなキラキラした笑顔で返す。どこから出てくるんだろ、このキラキラって。撮影の時いつも思うけど、和泉くんはモデルになると華を見せる。
そして、……なんだろう、この違和感。
本当に、和泉くんが憧れなのは知っている。
本人も『amberの専属モデルになろうと思った理由』として『和泉さんのファッションと人柄が素敵だったから』とインタビューで答えていたからだ。まあ、人柄は多少、現実よりマシなふうにしている。臆病、ではなく控えめ、と綺麗な表現で。
その後の印南くんのインタビューなどでも、和泉くんの名前をちょくちょく見かける。だから、事実だ。なので、これに関しては、和泉くんは杞憂しない。
あのインタビューを見つけて和泉くんに見せた時の記憶といえば。
『俺が、……看板モデルだから、そう言ったんじゃないの?社交辞令でしょ』
彼は、印南くんが本当に自分を憧れとしてみていることを、文面でわかっていた。わかっていたからこそ、あんなふうに言った。
でもそれによって、彼らしからぬ言葉が飛び出てきたことに、和泉くんは気付いてなかった。自分を看板モデルだと、言った。
まるで自分のかっこよさを自覚しているような物言いだった。
普段は絶対言わない彼のそんな言葉に、私は可愛い、と感じた。もちろん、言わないでおいたけれども。
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