第39話
「……まさか、俺目的だったとはね」
二人がいなくなり、横の和泉くんに視線を向けると、彼は、鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべていた。
……まさか、って。
和泉くんはやはり椎名のことを有馬くんから聞いていなかったらしく、私がそのことを告げると、青ざめた。
「……浅葱さんはわかってたの?」
「……うん。でも、和泉くん断りづらいだろうなー、って」
「……?なんで?」
「え?」
なんで、って。
てっきり、断りづらいだろうと思ってなにも言わないようにしていたのに、和泉くんはきょとんとした顔で首を傾げている。
……あれ?
「和泉くんの知り合いでしょ、あのブランドのデザイナーさんって、」
「知り合い、だけど?」
「……断るかどうか迷っていたんじゃないの?」
「いや、全然。ただ、女子と共演ってあんまりしたくないし、女の子は基本的に好きじゃないし、関わりにくい」
あ、浅葱さんはそんなことないんだけれど、と和泉くんが当然のように付け加えたので、私は赤くなった顔を見られないよう、顔を逸らした。
「……あ、」
そして、先ほど椎名に辛辣な言葉を言い放った印南くんが目に入る。
「和泉コウさん、ですよね?はじめまして、印南陵です」
「……はじめまして」
和泉くんも今もまだ彼がここにいたことに気付き、挨拶を返す。それに対して、和泉くんより少し低い印南くんは、和泉くんににっこりと微笑む。……先ほどの嘲笑とは、大違いの表情だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます